「勝つチームと負けるチーム、その違いとは?」

スポーツの世界はとてもシンプルです。勝つか、負けるか。ハイパフォーマンススポーツの現場では、常にこの二択が突きつけられます。だからこそ、「勝ったチームが強く、負けたチームが弱い」と語られることも少なくありません。
しかし本当に、強いから勝ち、弱いから負けるのでしょうか?
実際には、勝敗を分ける要因は単純ではありません。どれだけ良い準備をしてきても、どれだけ努力を重ねてきても、スポーツには「相手」が存在します。準備が万全でも、思い通りにいかないこともあるのです。だから、負けることも当然あります。それが勝負の世界です。
特に、何かが懸かった試合――たとえば、オリンピック出場がかかったアジア予選、メダルをかけた戦い、昇格や残留がかかった一戦などでは、戦いの質がまったく変わってきます。
私自身も、選手として、そして指導者として、数多くの「何かが懸かった」試合を経験してきました。そんな試合ほど、計画通りに戦略や戦術がハマっても勝敗には直結しません。どんなに準備をしても、現場では予期せぬことが起きます。だからこそ、勝負の根底にあるのは「自分たちを信じる力」、そして「規律を守る力」だと確信しています。
その力は、特別なものではなく、日々の生活やトレーニングから生まれるものです。つまり、日常の積み重ねが、そのままフィールド上に表れるのです。
その場しのぎのプレーは通用しません。普段の過ごし方、普段の判断、チームメイトとの関わり方が、勝負所で自然と表に出てきます。ごまかしが効かない、真剣勝負の世界です。
ある日、10年以上にわたって日本代表チームのマネジメントを務めてこられた方が、印象的な言葉を口にされました。
「日本代表の戦いは、戦争と同じです。」
この言葉は決して大げさではありません。オリンピックや世界大会での代表チームの試合は、ただの一勝一敗ではなく、その競技全体の未来を左右する重要な意味を持っています。だからこそ、試合中の「判断」は、その国の成熟度を表しているとも言えるのです。
「普段の判断が、試合での判断をつくる。」
その言葉を、私は今も大切にしています。勝敗を分けるのは技術やフィジカルだけではありません。チームとして、どれだけ信じ合えているか、どれだけ日常の規律を大事にしてきたかが試されます。
そして、勝敗はときに紙一重――得点差にすれば1点、2点のわずかな違いかもしれません。しかしその背後には、「勝者」と「敗者」の間に埋めがたいほどの大きな差が存在します。それは、結果に対する評価、経験値、次のチャンスの有無、チームとしての進化…あらゆる面においてです。
真に強いチームとは、ただスコアで勝つチームではなく、困難な状況でも自分たちを信じ、仲間を信じ、日々の努力を裏切らないチームです。
「強いから勝つ」のではなく、「信じ抜いた者が勝つ」のだと、私は信じています。
SPORTS BAR FEEL FREE オーナー
宮﨑 善幸