「我以外皆我師」自分より年下への尊敬と信頼

「我以外皆我師(われいがいみわがなし)」という言葉は、小説家・吉川英治(1892〜1962)の名言として広く知られています。吉川英治は『宮本武蔵』『三国志』『新・平家物語』など、数々の歴史小説を世に送り出した人物です。この言葉は、彼の随筆『折々の記』の中で、「自分以外のすべての人は、自分に何かを教えてくれる師である」という意味で使われています。どんな立場や年齢の人であっても、自分の学びや成長の糧となる存在です。
――その謙虚な学びの姿勢が「我以外皆我師」という言葉に込められています。
年齢を重ねるほど、自然と年下の人が増えていきます。しかし、先生とは「先に生まれた人」という意味にすぎません。年齢や経験を重ねても、常に「学ぶ姿勢」を忘れないことが、人としての成長を続ける鍵だと思います。私はこの言葉を思い出すたびに、どんなに若い人からでも学ぶ心を持ち続けたいと強く感じます。
私が尊敬する母校の大学野球部の名監督に、かつてこう尋ねたことがあります。
「監督が尊敬する指導者は誰ですか?」
その質問に対して、監督は一瞬の迷いもなくこう答えました。
「選手だよ。自分を一番成長させてくれるのは、目の前の選手たちだ。」
その言葉を聞いた瞬間、私ははっとさせられました。指導者という立場にありながら、常に選手から学び、自分を高めていこうとする姿勢。そこに、真の謙虚さと深い信頼関係がありました。
私自身もこれまで、多くの若い選手やスタッフと関わってきました。彼らの何気ない一言や行動が、自分の考えを変えたり、気づきを与えてくれることがあります。若い世代の柔軟な発想や感性、まっすぐな情熱は、私にとってかけがえのない学びの源です。指導者として彼らを導くつもりでいても、実際には私のほうが多くのことを教えられているのです。
「我以外皆我師」という言葉には、謙虚さだけでなく「他者への敬意と信頼」が込められています。年下だからといって軽んじることなく、彼らから何を学べるかを考える。その姿勢が、自分の器を広げ、関係性を豊かにします。そして、どんな人からも学ぼうとする姿勢を持ち続ける人こそ、年齢に関係なく輝き続けるのだと思います。
これからも私は、吉川英治の「我以外皆我師」という言葉を胸に刻み、自分より若い世代への尊敬と信頼を忘れず、共に成長していける人でありたいと思います。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸
