できるリーダーが「1人のとき」にやっていること

先日、大野英一氏が書いた『できるリーダーが「1人のとき」にやっていること』という本を読みました。リーダーシップについて書かれた本は数えきれないほどありますが、その多くは「どうすれば人を動かせるか」「チームをどう導くか」といった“HOW=方法論”に焦点が当たっています。

しかし、この本が語っているのは、他者との関係性や技術の話ではありません。誰かと話しているときではなく、「1人のとき」に何をしているかという、非常に静かで、しかし本質的なテーマです。読んでいるうちに、自分自身のこれまでの経験とも重なり、心に残る言葉がありました。

「学びとは他人から教わるものではない」

この一文に、深く共感しました。学びのきっかけは確かに他人から与えられますが、それを本当の意味で“学び”に変えていくのは、自分自身です。自分と向き合い、自分の言葉で咀嚼し、行動に変えることで、初めてその学びは血肉となります。

本書が教えてくれるのは、リーダーにとって「1人の時間」がどれほど大切かということです。リーダーは、ただ前に立って指示を出す存在ではありません。時には迷い、悩みながらも、自分の信念や価値観をもとに決断し、行動し、仲間に影響を与える存在です。その“信念”や“価値観”は、他人に与えられるものではなく、自分の内側から生まれるものです。

だからこそ、「1人のとき」にこそ、自分と向き合い、自分を深く知る時間が必要なのです。

本書では、多くの優れたリーダーたちの共通点が紹介されています。日々の忙しさの中でも、自分と対話する時間を確保しているということ。静かな時間の中で、これまでの自分の言動を振り返り、これから進むべき道を確認する。それは、自分の“軸”を育てる行為だと感じました。

私自身、コーチとして、また一つの場をつくる人間として、日々「決断」と「選択」の連続です。調子が良いときほど浮かれず、うまくいかないときほど自分を責めすぎず、自分の立ち位置を確かめる。それができるのは、やはり「1人のとき」なのだと再確認しました。

コーチングの世界で重要視される能力のひとつに「自己認識力」があります。
それは、自分で自分を知っているか。そして、他人が自分をどう見ているかを把握できているかということです。この“自己認識力”こそが、信頼されるリーダーになるための土台だと私は考えています。

リーダーシップとは、決して自分のための力ではありません。他人のため、チームのために発揮するものです。けれど、それを真に機能させるためには、自分という存在がしっかりと整っている必要があります。

この本は、リーダーとしての“在り方”を優しく、しかし力強く問いかけてくれます。スキルやテクニックを追い求める前に、まず「自分自身と向き合うこと」の大切さを教えてくれました。忙しさに追われがちな今だからこそ、多くの人に読んでほしい一冊です。

私も、この本を読み終えたあと、これまで以上に「1人の時間」を大切にしようと思いました。自分の声を静かに聞き、自分の言葉で語る。
その積み重ねこそが、自分らしいリーダーシップにつながっていくのだと、深く感じた一冊でした。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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