やりたいことを「やる・やらせる」勇気と挑戦

「やりたいことがある!」この気持ちを持てるだけで、とても幸せなことだと思います。私は幼稚園の園児の皆さんにラグビーをコーチングさせていただく機会があるのですが、そのとき毎回強く感じることがあります。
園児の皆さんはラグビー教室に来ると、次々と自分の気持ちを言葉にして表現してくれます。「鬼ごっこしたい!」「かくれんぼがいい!」「これはやりたくない!」「○○ちゃんと一緒がいい!」「○○ちゃんが意地悪する!」など、本当に素直でストレートです。大人からすると、わがままのように聞こえることもありますが、私はとても大切な感情の表現だと考えています。
人は成長していく中で、教育や環境の影響によって「我慢すること」を自然と覚えていきます。それは社会生活を送るうえで必要なことでもあります。その場にふさわしい言動をとる「TPO(Time=時、Place=場所、Occasion=場合)」を考え、行動できることは社会人として欠かせません。しかしその一方で、子どもたちのように勇気を持って「やりたいこと」や「やりたくないこと」をはっきり言葉にする姿勢は、大人になるにつれて失われていくように感じます。
本来大切なのは、「やるべきことをやる」「我慢すべきことは我慢する」と同時に、「やりたいことを口にする勇気」を持ち続けることではないでしょうか。年齢を重ねても、自分の感情や意思を素直に表現できる人は、周囲にとっても魅力的に映りますし、なにより自分らしく生きている証でもあります。
ここでよく問われるのが、「スポーツは人間性を高めることができるのか?」というテーマです。私はこの問いに対して「No」と答えています。もちろん「Yes」と考える方も多いでしょうが、私の考えでは、スポーツを通して培われるのは「人間性そのもの」ではなく、「自分をコントロールする力」だと思っています。
試合の中では、感情に流されず我慢する場面が数多くあります。一方で、自分の持ち味を思いきり発揮し、表現することも求められます。この「抑える」と「出す」のバランスを取る力こそが、スポーツを通して養われる力だと考えています。つまり、スポーツにはTPOに合わせて自分をコントロールする力を伸ばす効果があるのです。
だからこそ、コーチの役割は「我慢する力」だけでなく「自分を自由に表現する場」を創ってあげることにもあると思います。子どもたちのように素直に「やりたい・やりたくない」と言える環境があってこそ、選手は自分を曝け出し、挑戦し、成長していけるのです。
そしてこれは大学生の皆さんにも伝えたいことです。大学生活は、自由でありながら責任も伴う貴重な時間です。与えられた課題をこなすだけでなく、自分の「やりたいこと」を勇気を持って口にし、行動に移すことが大切です。やりたいことに挑戦できるのは、失敗を恐れず試すことが許される今だからこそ。自分をコントロールする力と、自分を表現する勇気。その両方を意識して過ごせば、大学生活はより実りあるものになるはずです。
やりたいことを「やる」勇気。やりたいと願うことを「やらせる」環境をつくる勇気。その両方が揃って初めて、人は自分らしく挑戦できるのだと信じています。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮崎 善幸