コーチに求められる許す力

選手はいつも、グラウンドの上でチャレンジを繰り返しています。
そして、何度もミスをして、たまに成功して、そのうち成功の割合が少しずつ増えていく——。
そんな成長のプロセスを、私はこれまでに何度も見てきました。

しかし、その「ミス」を最初から完璧に受け入れることができるコーチは、実は少ないのではないかと思います。
「なんでそんなミスをするんだ」「この前も同じことを言ったよな」
そんな言葉が、つい口をついて出てしまうことは、正直私にもありました。

あるときふと、「選手がチャレンジできなくなるのは、ミスそのものよりも、それを許さない空気があるからではないか」と気づかされたのです。
もちろん、コーチが選手とともに緊張感を持ってトレーニングに臨むことは、とても大切です。
練習では試合以上のプレッシャーを与えることで、本番でのパフォーマンスを引き出すことができます。
しかし、それと「チャレンジしにくい空気」があることは、まったく別の話です。

プレーヤーとは、プレーする人のこと。
そしてプレーとは、チャレンジがあってこそ意味を持つものです。
チャレンジのないプレーに、成長はありません。

ですから、コーチに求められるのは、戦術的な知識や分析力だけではないと思います。
何より大切なのは、「許す力」ではないでしょうか。

選手が失敗したとき、どんな心でそれを受け止めるのか。
同じミスを繰り返したとしても、「それでも信じている」というマインドセットでいること。
チャレンジする勇気を選手が持ち続けられるように、その背中を支える存在であること。
そういう姿勢こそが、コーチにとって本当に重要なことではないかと、私は思います。

もちろん、「許す」ということは「甘やかす」こととは違います。
必要なことはきちんと指摘し、指導する。
ただし、その上で「人としての信頼」は揺るがない。
その姿勢があるからこそ、選手は安心して限界に挑戦し、成長していくのだと思います。

選手の成長を信じることは、コーチにとっての使命です。
そのためには、まず自分自身が「人としての器」を広げていくこと。
そして、「許す力」は、その第一歩なのかもしれません。

今日もどこかで、誰かがグラウンドでチャレンジしています。
そのチャレンジを、本気で支えられる存在でありたいと、心から思います。

そのためにはコーチがチャレンジし、コーチ自身が自分を許す力があるか?それが問われます。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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