コーチングにおける「厳しさ」と「優しさ」の本質

コーチングにおける優しさとは
優しさとは、単に選手に寄り添い、甘やかすことではありません。競技スポーツの世界では、勝負の厳しさを理解し、それに適応することが求められます。選手の努力を認め、励ましながらも、成長のために必要な課題を明確に提示し、それに向き合うよう導くことが、本当の優しさといえるでしょう。
例えば、練習中に選手が手を抜いたり、苦しい場面で逃げようとしたりすることがあります。そのとき、ただ優しく接し、選手の甘えを許すことは、一見思いやりのある行動のように思えます。しかし、それでは選手の本当の成長にはつながりません。試合のプレッシャーがかかる場面では、普段の姿勢がそのまま現れます。選手自身が本当に強くなるためには、甘えを許さず、成長のために正しい方向へ導くことが必要です。
コーチが選手へのアプローチで妥協すれば、選手の成長の可能性を縮め、パフォーマンス向上につながりません。そして、選手が求める結果に辿り着けないことを、私自身何度も経験してきました。
コーチングにおける厳しさとは
厳しさとは、怒鳴りつけたり、自分の感情をぶつけたりすることではありません。選手が成長するために必要な環境を整え、その中で自ら考え、課題に向き合えるようにすることが、真の厳しさです。
選手が成長するためには、自分自身で考え、答えを導き出す時間が必要です。コーチはそのための課題を提示し、選手が試行錯誤しながら成長できるよう促すことが求められます。すぐに答えを与えてしまえば、選手は自ら考える力を養う機会を失います。成長には、もがく時間が不可欠です。自分自身で壁を乗り越えた経験こそが、選手の本当の力となります。
また、選手の努力を正当に評価し、成果を認めることも厳しさの一部です。適切なフィードバックを与え、目標に向かって努力を続けるための指針を示すことが、指導者の役割といえるでしょう。
厳しさと優しさのバランス
厳しさと優しさのバランスは、単純に計算して決められるものではありません。選手一人ひとりの個性や成長段階に応じて、適切な関わり方を見極めることが重要です。状況に応じて、時には厳しく、時には優しく接することが求められます。
このバランスを取るためには、コーチとしての感性が欠かせません。頭で考えるだけでなく、選手の姿勢や反応を感じ取り、最適なアプローチを選ぶことが大切です。ブルース・リーは「考えるな、感じろ(Don’t think, feel.)」という言葉を残していますが、指導においても同じことがいえるのではないでしょうか。
選手が成長し、競技人生を通じて学びを得るためには、指導者が適切なバランスを持って関わることが不可欠です。厳しさの中に優しさを、優しさの中に厳しさを持ち、選手とともに歩んでいくことが愛であり、理想の指導方法を磨いていくための手段だと感じています。
SPORTS BAR FEEL FREE オーナー
宮﨑 善幸