ビジョンが変わる瞬間——立ち止まる勇気

夢や目標を達成したあと、なぜか心にぽっかりと空いたような気がする。
――そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。トップアスリートが大きな大会を終え、大学4年生が最後のシーズンを終えた後、目標にしていたことが終わった瞬間……
その瞬間、周囲は「おめでとう」「次は?」「次の目標は?」と声をかけます。でも、実は、そのとき一番聞かれたくないのは、「次は何をするの?」かもしれません。なぜなら、それまでずっと自分のすべてを注ぎ込んで、一つの夢を追い続けてきたからです。その先には、もう「次の目標」ではなく、「自分とは何か」という静かな問いが待っているのです。
漢字の「道」は、とても深い意味を持っています。「しんにょう(辶)」は「止まる」こと、「首」は「振り返る」ことです。つまり、「道」とは、ただ前に進むことではなく、一度立ち止まり、これまで歩んできた自分の足跡を見つめ直す行為なのです。走り続けたからこそ、今は休むべきです。焦って新しいビジョンを無理やり描こうとしても、それは自分の心に響かないものです。
この空白は、失ったわけではありません。むしろ、次の自分を育てる、大切な「道」です。
私は長年、スポーツの指導者として、選手たちに「ゴール設定の重要性」を伝えてきました。しかし、その中で学んだことは、夢や目標に「大きい」「小さい」なんて基準はないということです。「日本一になる」も、「家族と毎日笑顔で過ごす」も、どちらも本人が本当に大切にしているものであれば、同じくらい尊いものです。だから、ビジョンが変わるとき、あなたが求めているのは「次」を探しているのではありません。「自分が何を大切にしてきたのか」「これからどう生きていきたいのか」という答えを、静かに探す時間です。
私も、長年の夢だったSPORTS BAR FEEL FREEを立ち上げた今、残りの人生をどのように豊かにしていくべきか、自分のやりたいことが誰のために、世の中のためにどんな貢献ができるのか、そして一緒に人生を歩んでいる家族や仲間のビジョンに対して、私ができることは何なのか――そんなことを、ゆっくりと考えている時間が、とても大切だと感じています。
FEEL FREEを始めたのも、そうした想いからでした。誰かと比べて「成功」しようとするのではなく、自分らしいペースで、自分らしい生き方を、ゆっくりと選んでいく――そんな場所でありたい。
ビジョンが変わるとき、あなたは「次」を探しているのではありません。「自分」を、再び見つけようとしているのです。焦らなくていい。無理に前を向かなくていい。今、立ち止まっているあなたに、静かに、そっと、「よく頑張ったね」と、心の中で言ってあげてください。そして、また、自分の足で、少しずつ、歩き出せばいい。
夢は、必ずしも大きな形ではない。
毎日のひととき、大切な人との笑顔、自分らしく息ができる時間――それらこそが、真のビジョンです。
FEEL FREEは、あなたがここに来なくても、どこにいても、自分の居場所で、自分を感じて、次への一歩を踏み出せるように、そっと寄り添える存在を目指します。
あなたの、ゆっくりとした歩みを、心のどこかで、いつも応援しています。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸