フィードバックの重要性:選手が成長するための伝え方

人が大きく成長していくためには、自分の努力や取り組みに対して他者からのフィードバックを受け取ることが欠かせません。特にスポーツの世界では、日々の練習や試合の中で「今の自分に何が足りないのか」「どの部分をさらに伸ばしていけばよいのか」を知ることが、成長のスピードを大きく変えます。そして、そのフィードバックを“誰から”“どのように”受け取るかによって、選手の今後のキャリアが大きく左右されるのです。ここでは、コーチが選手に対して成長につながるフィードバックを行う際に大切にしたいポイントを整理してみます。
①正直な自分の言葉で伝える
フィードバックの基本は「正直さ」です。オブラートに包んで伝えた言葉は、結局は選手にとって何を改善すべきかが曖昧になってしまいます。逆に、シンプルでダイレクトな言葉は一時的に厳しく感じることもありますが、成長を目的としたものであれば必ず選手には伝わります。大切なのは、その言葉の裏にある「本気で選手を成長させたい」という想いです。信頼関係と尊敬が土台にあるとき、正直な言葉は選手の心を強く動かします。
②適したツールでフィードバックする
現代はフィードバックの方法も多様化しています。直接顔を合わせて言葉で伝えることはもちろん大切ですが、それだけに限る必要はありません。映像を使った分析、LINEやメールなどのメッセージ、音声や動画でのコメント、あるいはデータを提示して客観的に説明する方法など、選択肢は豊富です。選手の性格や状況に合わせて最も効果的なツールを選ぶことが、フィードバックの浸透度を高めます。「この伝え方ならより伝わる」と意識的に工夫することが求められます。
③タイミングが重要。一番の旬を逃さない
フィードバックには“旬”があります。例えば試合後すぐに伝えることで、選手はプレーの感覚が鮮明なうちに改善点を受け止めることができます。一方で、感情的に落ち込んでいるときに厳しい言葉を投げかけても逆効果になることもあります。良いプレーを褒める場合も同様で、旬を逃さずその瞬間に伝えることで、選手の自信やモチベーションを最大限に高めることができます。コーチの観察力と判断力が問われる部分です。
④言った後のフォローアップ
コーチは評論家ではありません。単に指摘して終わりではなく、「その後、どう一緒に取り組むのか」が重要です。フィードバックを受けた選手が実際に改善に向かうプロセスを、コーチが伴走してサポートすることで信頼関係が深まります。例えば「次の練習で一緒にやってみよう」「この動きを動画でチェックしてみよう」といった小さなフォローアップが、選手の行動を前に進めます。フィードバックは言葉で終わるものではなく、行動で支えるものなのです。
⑤選手からもフィードバックをもらう
最後に大切なのは、コーチからの一方的なフィードバックだけではなく、選手からもフィードバックをもらうことです。「この練習はどう感じたか」「指導の仕方で分かりやすい部分や改善してほしい部分はあるか」といった問いかけを通じて、双方向の関係を築くことができます。コーチが選手から学ぶ姿勢を示すことで、選手自身も「自分の声がチームや指導に活かされている」と感じ、より主体的に成長へと向かうことができるのです。
フィードバックは、ただの言葉ではなく「成長のきっかけ」です。正直さ、適切な方法、タイミング、フォローアップ、双方向性――この5つの視点を意識することで、選手にとってフィードバックは「耳の痛い言葉」ではなく「未来への贈り物」となります。コーチが心を込めて伝える一言は、選手の可能性を大きく広げる力を持っているのです。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
」宮﨑 善幸