フィードバックセッションで心がけること

予習と復習の両方が大切ですが、特に「復習」は起こったことを次に活かすうえで欠かせないプロセスです。同じ失敗を繰り返さないために、また成功したことを再現性のあるものにするために、フィードバックセッションは非常に重要です。コーチが選手に行うフィードバックは、単なる指摘や反省会ではなく、次の行動や成長につながる「架け橋」であるべきだと私は考えます。ここでは、その際に心がけたいことを「5W1H」に沿って整理してみます。

What ― 何を
まず大切なのは「何をフィードバックするか」を明確にすることです。試合や練習で起こった出来事をすべて取り上げるのではなく、焦点を絞る必要があります。目標に照らして達成できた点はどこか、改善が必要な要因はどこにあったのか。その視点が定まらないままでは、選手は何を次に意識すればいいのか分かりません。結果にフォーカスするのか、プロセスに焦点をあてるのか。どこを取り上げるかを決めることが、フィードバックの出発点となります。

When ― いつ
次に「いつ」フィードバックするのか。これは非常に繊細な要素です。タイミングを逃せば、せっかくの内容も効果が半減してしまいます。一般的には早ければ良いと思われがちですが、必ずしもそうではありません。試合直後の感情が高ぶっているときに伝えても、選手の心に響かないことがあります。逆に、間を置きすぎると記憶が薄れてしまう。大切なのは、選手が冷静に受け止められる状態を見極め、そのときに実施することです。

Where ― どこで
「どこで」行うのかも工夫が必要です。例えば、試合後すぐにロッカールームでチーム全体に簡単なフィードバックを行い、翌日のミーティングで映像を用いて個別に振り返る、といった方法もあります。また、公共の場で厳しい指摘をすると選手が萎縮する場合もあります。逆にチーム全体で称賛を共有することで雰囲気を高められる場面もある。フィードバックの内容や目的に応じて、場所や形式を選択することが大切です。

Who ― 誰が誰に
「誰から言われるか」で、フィードバックの受け止め方は大きく変わります。信頼関係のあるコーチからの言葉は響きやすいですが、同じチームメイトからの言葉のほうが心に届くこともあります。キャプテンから伝えるのか、アシスタントコーチから伝えるのか。対象となる選手の状況に合わせて、誰が伝えるのが効果的かを考えることも重要です。

Why ― なぜ
「なぜフィードバックをするのか」という目的意識をコーチ自身が持ち続けることが大前提です。単にミスを指摘するためではなく、選手が成長し、次により良いパフォーマンスを発揮するために行うものです。この「なぜ」がぶれると、ただのダメ出しになり、選手のモチベーションを下げてしまいます。選手に「次につながる学び」を届けることこそ、フィードバックの本質です。

How ― どのように
最後に「どのように」伝えるのか。言葉だけで伝えるのか、映像を使うのか。個別で行うのか、チーム全体で行うのか。方法によって選手への伝わり方が大きく変わります。映像を用いれば客観的に理解しやすくなりますし、グループで共有すればチーム全体の共通認識が高まります。一方で、個別に丁寧に伝えることで、選手の気づきを深められる場合もあります。目的に応じて方法を使い分けることが重要です。

フィードバックセッションは「振り返り」ですが、過去を責める時間ではありません。未来を創るための時間です。コーチが心がけるべきは、選手の成長を支えるために、何を・いつ・どこで・誰が・なぜ・どのように行うのかを常に意識し、効果的に実施することです。その積み重ねがチームを強くし、選手を次のステージへと導いていきます。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

目次