リーダーとして他者に自分が与えている影響

リーダーシップの権威であるジョン・C・マクスウエルの著書『マクスウエルのリーダーシップ集中講座』の中に、とても印象的な一節があります。
「人は誰でも、一生のうちに少なくとも一万人の人に影響を与えるという。あなた自身も、だ!否定しても始まらない。問題は、あなたがはたしてほんとうに一万人の人に影響を与えられるかどうかではない。『どんな』影響を与えるかだ。自分の影響力を『どのように』使うかだ。」
この言葉を読んだとき、私は強く心を揺さぶられました。普段、自分が他者にどのような影響を与えているかを考えることはありますが、常に深く意識しているわけではありません。しかし、たとえ意識していなくても、私たちは日々誰かに影響を与え、また逆に誰かから影響を受けながら生きています。この事実を受け入れたとき、自分の立ち居振る舞いや言葉の選び方がより大きな意味を持つのだと気づかされました。
リーダーというと、会社の経営者やチームのキャプテン、あるいは指導者のような特別な立場を思い浮かべがちです。しかし、この本で語られているのは「すべての人がリーダーである」という考え方です。家庭における親の言動が子どもに影響を与えるように、友人同士の何気ない一言が相手の行動を変えるように、誰もが日常生活の中で小さなリーダーシップを発揮しています。つまり、人は意図せずとも常に「誰かに影響を与える存在」であるということです。
ここで大切なのは、「どんな影響を与えるリーダーになるのか」という問いです。たとえば、ちょっとした言葉で相手を励ますこともあれば、逆に傷つけてしまうこともあります。仕事や学びの場での判断や態度が、周囲のやる気を引き出すこともあれば、失望を与えることもあります。影響を与えるという事実から逃れることはできません。だからこそ、自分が与える影響を少しでも良いものにしていこうと意識することが大切だと感じます。
私自身、これまでスポーツの現場や教育の場で多くの選手や学生と関わってきました。その中で実感しているのは、「人は言葉以上に姿勢から影響を受ける」ということです。どれだけ立派なことを語っても、自分自身がその姿を体現していなければ言葉は空虚に響きます。逆に、誠実に努力し続ける姿勢は自然と人に伝わり、強い影響を与えます。リーダーに求められるのは完璧さではなく、誠実に取り組む姿勢なのだと思います。
また、リーダーシップとは一方向に流れるものではなく、相互作用の中で磨かれていくものでもあります。相手に良い影響を与えようとすればするほど、自分もまた相手から学びを得て成長していきます。人と人との関わりの中で生まれる影響は決して一方通行ではありません。だからこそ、「どうすれば周囲にポジティブな影響を残せるのか」を考え続けること自体が、自分自身の成長につながるのだと思います。
この本を通して、私は「自分はどんな影響を与えるリーダーでありたいのか」を改めて考える機会をいただきました。そして、その答えを探す過程こそがリーダーシップを学ぶ核心なのだと気づきました。立場や役割に関係なく、一人ひとりが他者に影響を与えている以上、その影響を少しでも良いものにする努力を重ねていくことが大切です。
リーダーシップとは特別な才能や肩書きではなく、日常の中での小さな選択と積み重ねによって築かれるものです。そして、「良い影響を与えるリーダーでありたい」と願いながら生きる人の人生は、必ず豊かで意味あるものになるのだと強く感じています。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮崎 善幸