「ありがとう」を大切に。心に届く、何気ない会話の力

人は毎日、誰かと会話をしながら生きています。家族、友人、同僚、ご近所の方、お店の人など、立場も関係性もさまざまですが、私たちの暮らしには、いつも「会話」が寄り添っています。

もちろん、何かを伝えるために意識して交わす会話もありますが、特に目的のない、ふとした「何気ない会話」こそが、心をじんわりと温めてくれる瞬間を生み出してくれるように思います。

たとえば、「今日は天気がいいですね」「この前の話、うまくいきました?」「ありがとう、助かりました」――そんな何気ないひと言は、一見するとささいで特別な意味はないように見えるかもしれません。でも、その言葉には、相手を気にかける気持ちや、小さな感謝、やさしさが込められているように感じます。

ある朝、散歩をしていたとき、すれ違った年配の方が、にこっと笑いながら「おはようございます」と声をかけてくださいました。そのたった一言で、なんだか心が和らぎ、気持ちが軽くなったのを今でも覚えています。ただのあいさつなのに、朝から「心が温まる」ひとときでした。

また、職場やお店などで、ちょっとしたお願いをした後に返ってくる「ありがとう」という言葉も、何度聞いても嬉しいものです。特に、疲れていたり、気持ちが沈んでいるときほど、その「ありがとう」が心に沁みて、思いがけず励まされることがあります。

忙しい日々のなかでは、つい「この会話に意味があるのか」と考えてしまうこともあるかもしれません。でも、会話の価値は、その“重さ”ではなく、そこに込められた“思い”にあるのではないでしょうか。

特別な話題や長い会話でなくても、「ありがとう」「おつかれさま」「大丈夫?」といった一言が、誰かの心の支えになることがあります。言葉は目に見えませんが、ときに大きな力を持って、そっと相手の気持ちを支えてくれるのです。

私の妻も、私がコーチとして試合や海外遠征から帰ってきたとき、勝敗に関係なく、いつもさりげなく「おつかれさま」と言ってくれます。その一言は、目標を達成したときでも、惨敗したときでも、何も変わらない。そしてその「おつかれさま」は、いつも私の心に残っています。

最近では、対面でのやりとりが減り、スマートフォンやSNSによる文字でのコミュニケーションが主流になってきました。それも便利で素晴らしい手段ですが、やはり声に出して伝える言葉の持つ力は、どこか違うものがあると感じます。声のトーンや表情、間の取り方――そうした要素が合わさることで、より深く、相手の心に届くのだと思います。

日常の中で交わされる、たわいもない会話。小さな「ありがとう」「おはよう」「またね」が、私たちの暮らしをやさしく包み、人と人とのつながりを育んでくれます。

「今日はなんだかいい日だったな」と思える日。その一日は、実はそんな“何気ないひととき”の積み重ねなのかもしれません。さりげない会話、ちょっとした気づかい、知らず知らずのうちに誰かの心に届いていた言葉たち――それらが、ふとした瞬間に、心の奥に温かな灯をともしてくれるのです。

これからも、そんな一言一言を大切にしながら、誰かと心の通う時間を重ねていけたら嬉しいです。

今日も、「ありがとう」を大切に。
何気ない会話の中にあるその一言が、心にそっと届くような、やさしい時間を過ごせますように。

SPORTS BAR FEEL FREE オーナー
宮﨑 善幸

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