全ては信頼・尊敬の関係から始まる

私たちが求めている「結果」を出すためには、何から始めればよいのでしょうか。結論から言えば、それは「関係性の質を高めること」から始まります。どれだけ個人の能力や努力が優れていても、信頼や尊敬のない関係の中では、チームとして本当の成果を上げることはできません。
この考えを整理して示しているのが、ダニエル・キムの「成功循環モデル」です。このモデルでは、成功は次の4つの循環によって生み出されるとされています。
- 関係の質
- 思考の質
- 行動の質
- 結果の質
結果を出すためには、まず「関係の質」を高めることが重要です。信頼や尊敬に基づいた関係性があると、相手の意見を素直に受け止め、前向きに考える「思考の質」が生まれます。思考が健全であれば、積極的で建設的な「行動の質」が育ち、結果的に望む「結果の質」につながるのです。逆に、結果だけを追い求めると、関係は悪化し、思考は否定的になり、行動の質も落ち、結果も出ないという悪循環に陥ってしまいます。
これはスポーツの現場で特に顕著に表れます。例えば、試合に勝つという結果だけを強調すると、選手は「ミスをしてはいけない」という恐れに支配されやすくなります。その結果、チャレンジが減り、プレーが小さくまとまってしまい、本来持っている力を発揮できなくなります。監督やコーチが「勝て」「結果を出せ」と声を荒げるだけでは、選手の思考は委縮し、行動も消極的になり、結果的にチーム全体が停滞してしまうのです。
一方で、信頼と尊敬に基づいた関係性を築けているチームでは違います。選手同士が互いの努力を認め合い、コーチと選手が本音で語り合える関係性があると、選手は安心して挑戦できます。失敗しても責められるのではなく、学びにつながると信じられる環境があるからこそ、積極的な思考が生まれます。その思考が質の高い行動につながり、結果として試合での勝利やチームの成長を引き寄せていくのです。
例えば、海外のプロスポーツチームでは、監督と選手が日常的に互いの意見を交換し合う文化を持つところがあります。そのようなチームでは、戦術や役割をめぐる議論が活発に行われますが、根底には「相手を尊敬しているからこそ意見を伝える」という前提があります。こうした環境では選手が主体的に考え、行動するようになり、試合での一体感や成果に直結しています。
信頼や尊敬は一朝一夕で築けるものではありません。日常の小さな行動の積み重ね、例えば「仲間の話を最後まで聞く」「感謝を言葉で伝える」「相手の努力を認める」といった習慣が、やがて大きな信頼の土台になります。そしてその土台の上に立ったとき、チームは自然と質の高い思考と行動を生み出し、求める結果に近づいていくのです。
つまり、結果は「追いかけるもの」ではなく、「信頼と尊敬の関係性の上に自然と生まれるもの」です。だからこそ、私たちが本当に大切にすべきは日々の関わりの質であり、そこからすべての循環が始まるのです。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸