勝負は「結果」以上に、「プロセス」に価値があるのか?

私はハイパフォーマンススポーツにおいては勝つことにフォーカスしています。だからこそ、「勝つためのプロセス」が何より大切だと考えています。
人は「勝った」「負けた」という結果に注目しがちですが、私が大切にしているのは、その背後にある「プロセス」です。特に、どんな環境でも勝ち続けるコーチたちが最も大事にしているのが、この“プロセスの価値”なのです。
先日視聴した、スポーツコーチング研究者セルヒオ・ララ・ベルシャル博士の講義には、深くうなずかされる点が多くありました。彼は「Serial Winning Coaches(勝ち続けるコーチ)」の研究を通して、彼らが単なる勝利者ではなく、「価値観と信念を軸に文化をつくる人」であることを明らかにしています。
特に印象的だったのは、「選手・環境・状況が変わっても、自らの信念をぶらさずに成果を出し続ける」という点でした。つまり、勝ち続けるコーチには、状況に応じて柔軟に対応しながらも、変えてはいけない“信念”があるのです。そしてその信念は、選手を信じ、愛し、成長を信じる姿勢に根ざしています。
私自身、これまでの指導経験を振り返ってみても、勝つためには技術や戦術だけでは足りないと強く感じています。むしろ、“どんなチーム文化をつくるか”のほうが勝敗を左右する。選手同士が信頼し合い、自ら考え行動するチーム。それを支えるのが、日々の声かけや、ひとりひとりの努力を見逃さずに讃える姿勢、そして正直さのあるフィードバックなのです。
勝ち続けるコーチたちは、単にトレーニングを管理するだけではなく、「勝てる文化」を創造します。それは時間のかかることですが、一度根づけば、その文化は人を育て、勝利を引き寄せ、さらに次の世代へと継承されていきます。
もちろん、勝負の世界にいる限り「結果」は重要です。しかし、その結果を正当に評価するためには、「そこまでのプロセスをどう積み上げたか」を見なくてはいけません。プロセスを大切にできる人間だけが、結果にふさわしい価値を見出すことができるのです。
私はこれからも、ハイパフォーマンスなスポーツの世界においては「勝負」にこだわり続けたいと思います。だからこそ、ただ勝つのではなく、「勝ち続ける」ためのプロセスに価値を置くコーチでありたいと考えています。
そして、私の目指す姿は、勝利を生み出す文化を共有できる仲間とともに、どんな環境においても「勝てるチーム」を育てられるコーチを育成できる“コーチデベロッパー”になることです。
「勝ち続けること」は単なる結果の連続ではなく、「文化の継続」であり、「信頼の積み重ね」でもあります。だからこそ、特定の優れたコーチがいなくなった途端に勝てなくなるようでは、真の文化とは言えません。
今、日本に必要なのは、システムとして“勝ち続けるコーチ・選手・チーム”が育っていく土壌づくりです。個人の力に頼るのではなく、組織として、地域として、国として、勝利の文化を持続可能な形で根づかせていく環境整備が不可欠だと感じています。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸