喜びを他者と共有することで広がる幸福感

喜びという感情は、人間の感情の中でも最も嬉しく、幸福感を強く感じられるもののひとつです。もちろん、自分一人で喜びを実感することもあります。しかし、その喜びを他者と共有できたとき、幸福感はさらに大きく、心の奥深くまで広がっていきます。
そもそも大きな喜びは、決して楽な道の先にあるものではありません。苦しさや悔しさ、うまくいかない苛立ちを何度も経験し、それでも諦めずに乗り越え続けた先に訪れるものです。その積み重ねの結果として湧き上がる喜びだからこそ、かけがえのない価値が生まれるのです。
ただし、その瞬間を自分ひとりで噛みしめるだけでは、本当の喜びにたどり着くことはできません。仲間や家族、支えてくれた人たちと分かち合うことで初めて、心からの「やってきてよかった」という実感につながります。
2025年の女子ラグビーワールドカップ、日本代表がスペインとの試合で勝利を収めたことは、その象徴でした。歴史の中でも意義深い一勝であり、選手たちが目指してきた「トップ8」という目標には届かなくとも、積み上げてきた努力を世界の舞台で証明できた瞬間でした。直近のテストマッチで勝利していたとしても、やはりワールドカップという舞台での勝利はまったく別物です。その重みを、グラウンドに立つ選手だけでなく、応援してきた仲間、サポーター、スタッフ、家族が一体となって噛みしめました。
試合後、スタンドとフィールドが一体となって歓喜に包まれる光景が広がりました。選手たちは日の丸に寄せ書きされたメッセージを手にし、笑顔で写真に収まりました。その背後には、長年支え続けてきた人たちが掲げる横断幕やタオル、声を枯らして応援してきた人たちの笑顔がありました。そこには、単なる勝利の喜び以上の「共有された幸福感」があふれていました。
この瞬間にこそ、スポーツの本質が表れています。選手はプレーで人々に感動を届け、応援する人々はそのエネルギーを返す。そして勝利をともに分かち合うことで、関わるすべての人が「信じてきてよかった」「やってきてよかった」と思える。さらに「次の挑戦をしていこう」という新たな気持ちが芽生えていきます。
喜びを他者と共有すること。それは幸福感を何倍にも広げる力を持ち、未来への活力を生み出します。今回のスペイン戦の勝利は、そのことを私たちに改めて教えてくれました。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸