地域クラブが育む、世代を超えた学びと喜び

学生スポーツの魅力は、「学年」という期限があるからこそ、ひとつひとつの瞬間が尊く、感動に満ちていることだと思います。限られた時間の中で、仲間と共に全力を尽くし、成長していく姿は本当に美しいものです。しかし、近年は少子化や教員の働き方改革の影響で、学校単位での部活動から地域スポーツへの移行が進んでいます。女子ラグビーもその流れの中にあり、地域を母体としたクラブチームで活動する選手が増えています。

私がGMを務めている「ARUKAS KUMAGAYA」は、日本初の産学官連携による女子ラグビークラブとして設立され、今年で11年目を迎えました。「SAKURA、はぐくむ。」という理念のもと、世界で活躍する女性を輩出することを目標に活動を続けてきました。トップチームが日本代表を目指し、世界で挑戦し続けることを第一フェイズと位置づけ、2016年リオデジャネイロオリンピックでは9名のオリンピアンを輩出。今年のイングランド女子ラグビーワールドカップでは6名の選手と1名のスタッフが世界の舞台で戦いました。これもひとえに、理念に共感し支えてくださるステークホルダーの皆さまのおかげです。

アルカス熊谷を立ち上げた際に最も大切にしたのは、「普及と育成の仕組みをつくること」でした。アカデミー、ユース、トップチームと、一貫して学び、成長できる環境を整えることで、子どもたちがトップ選手に憧れ、同じ舞台を目指せる流れをつくること。それがクラブチームの使命であり、地域に根ざしたスポーツの形だと考えています。

そして今、その理念が実を結び始めています。11年目を迎えたアルカス熊谷のトップチームでは、共同キャプテンを務める2名の選手が、アカデミーとユースからトップチームに上がってきた“生え抜き”の選手たちです。彼女たちは幼い頃から同じクラブで育ち、年上の選手に憧れ、年下の選手に慕われながら、世代を超えて刺激し合ってきました。学年という枠に縛られず、ひとつのクラブとして繋がりながら成長できる環境は、まさにクラブチームだからこその魅力です。

昨日の全国大会をもってラグビー競技から一度離れる高校生の選手がいます。彼女は小学生のときからアルカスアカデミーに在籍し、高校ではラグビーと重量挙げの二刀流に挑戦してきました。そして次のステージとして、自分がやりたいことを実現できる大学に進学し、新しいことにチャレンジしていきたいとのことでした。彼女のように、自らの可能性を信じて次の舞台に羽ばたく姿を見ることこそ、日々の何よりの喜びです。

9年間という長い時間をアルカス熊谷で過ごし、仲間やコーチ、地域の方々に支えられながら成長した彼女の姿は、クラブが育む「人の力」を象徴しています。クラブという場は、単に競技力を高めるだけでなく、人としての成長や自立を促す学びの場でもあります。勝敗を超えて、仲間と切磋琢磨し、挑戦し続ける中で得られる経験こそが、その後の人生において何よりの財産になるのです。

また、他の選手たちもそれぞれの夢や目標に向かって歩み始めています。アルカス熊谷でラグビーを続ける選手、自分の将来やりたいことに向けて進学する選手。進む道は違っても、クラブで培った経験と仲間との絆は、きっと彼女たちの背中を押してくれるはずです。どんな挑戦であっても、自分の人生に誇りを持ち、胸を張って生きてほしい。スポーツの世界でなくても、アルカスで学んだ「挑戦する心」と「感謝の気持ち」を忘れずにいてほしいと願っています。

学年の壁を越え、年齢を超えてつながり合うことで、人はこんなにも大きく成長できる。その姿を見られることが、クラブを運営する一人としての最大の幸せであり、日々の喜びなのです。

地域に根ざしたクラブだからこそ、選手がラグビーを離れても、これからも人生の節目節目で関わり合うことができます。帰省の際に顔を出してくれたり、後輩たちに経験を語ってくれたり。そんな“人と人のつながり”が続いていくことこそ、クラブの本当の価値であり、地域スポーツの未来だと思います。アルカス熊谷はこれからも、「人を育み、地域と共に歩むクラブ」であり続けたいと思います。

SPORTS BAR FEEL FREE オーナー
宮﨑 善幸

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