夢を諦めたくなる時に立ち返る場所

「夢を諦めたい」――誰しも一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。
夢とは簡単には叶わないものであり、思い描いた通りに進まない現実に直面すると、心が折れそうになる瞬間が訪れます。努力しても結果が出ないとき、周囲と比較して劣等感を抱いたとき、あるいは体力や気力が尽きかけたとき。そんなとき、人は「もう自分には無理だ」と感じ、夢を手放したくなるのです。

しかし、そのときに必要なのは「立ち返る場所」です。

私自身、ラグビーという競技を通じて多くの挑戦をしてきましたが、決して順風満帆ではありませんでした。結果が伴わず悔しい思いをしたこと、目標を見失いそうになったことは数え切れません。それでも前に進むことができたのは、「目的」に立ち返ることができたからです。

ここで大切なのは、「夢」と「目的」を区別して考えることです。
夢はしばしば“目標”に近いもので、たとえば「世界大会で優勝する」「オリンピックに出場する」といった、具体的な到達点を指すことが多いでしょう。対して目的とは、「なぜその夢を叶えたいのか?」という根源的な理由です。

夢は状況によって修正されることもあります。しかし目的は、もっと深いところにある自分の軸であり、変わることはありません。

私が女子ラグビーの指導に携わり始めた当時、日本はアジアでも5位という立ち位置でした。世界大会で戦うなど夢のまた夢。誰もが「現実的ではない」と思っていた時代です。そんな中で掲げた夢は「世界で戦えるチームをつくる」こと。しかし、度重なる敗北や選手の怪我、世界との実力差、環境面の制約に直面すると、その夢は途方もなく遠くに感じられました。

それでも歩みを止めなかったのは、「日本人女性の強さと美しさは世界一であり、その姿を通して世界中に挑戦する勇気を届けたい」という目的があったからです。目的に立ち返ることで、「だから諦めてはいけない」と心を立て直すことができました。

夢を諦めたくなる瞬間に大切なのは、次の問いを自分に投げかけることです。

  • そもそも、なぜこの夢を追いかけているのか?
  • この夢が叶ったとき、自分はどんな人の役に立てるのか?
  • 夢を諦めたら、どんな後悔が残るのか?

この問いに正直に向き合えば、再び立ち上がるための力が湧いてきます。

夢の達成には時間も労力もかかります。だからこそ、うまくいかない時期に「目的」を見失わないことが、夢を叶えるための最大のポイントです。

夢はゴール。目的はコンパス。
ゴールまでの道が険しくても、コンパスさえあれば必ず前進できます。

もし今、あなたが夢を諦めそうになっているなら、一度立ち止まって「目的」に立ち返ってみてください。きっとそれが、また一歩を踏み出すための原動力になるはずです。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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