弱みをさらけ出せる強さと自分を感じる習慣

高校生女子ラグビーチームの試合前のアプローチについてお話します。舞台は、全国一位の強豪と対戦する前のウォーミングアップの時間でした。

私は、チームでのアップが始まる前に、それぞれが行う個人アップの様子をじっと観察していました。10名の選手たちは、表情も動きもさまざまでした。不安を隠せずにいる子、緊張から顔がこわばっている子、無理に気合を入れようとしている子。選手たちの「心の声」が外に滲み出ているように見えました。

そこで私は急遽、その場でショートミーティングを行うことにしました。テーマは「今の本音を正直に語る」。試合前はどうしても「弱気を隠して強気を演じる」ことが良しとされがちです。確かに、それは競技者にとって大切なマインドセットの一つです。しかし、この日のチームの状態を考えた時、むしろ自分の弱みを曝け出した方が、気持ちが整理され、前向きに戦えると感じたのです。

選手たちは、一人ずつ勇気をもって口を開いてくれました。ある1年生の選手は、「怖いです」と涙を流しながら自分の感情を素直に吐き出しました。その姿は決して弱さではなく、自分を正直に見つめ、仲間に共有する強さそのものだと私は感じました。コーチとして私は、一人ひとりの言葉を受け止めながら、「今できること」「自分たちにできるプレー」に意識を集中するよう伝えていきました。

ここで私が大切にしたのは、「自分の心を正しく感じる」ことです。心は無理やり押し殺すものではなく、感じ取ったうえで最善の状態へ導くトレーニングが必要なのです。これは技術練習と同じくらい、いや、それ以上に大切なメンタルトレーニングです。

ミーティングを終えた選手たちは、どこかスッキリした表情に変わっていました。気持ちを整理したことで、次のウォーミングアップにしっかり集中できるようになったのです。

結果として試合には敗れましたが、選手たちは「自分たちで決めたワントライを取る」という目標をやり遂げました。強豪相手に挑み、最後まで自分たちの力を発揮しきれたことは、彼女たちの大きな自信につながったはずです。

ユース世代の選手たちにとって大切なのは、自分の心を無理やり隠すことではなく、「今の自分の心を正直に感じ取り、そこから最高の状態へ持っていく習慣を身につけること」です。その習慣は、競技だけでなく、これからの人生を生き抜くうえで大きな財産になるでしょう。

今回のアプローチは、普段の私ならあえてしないことでした。しかし、必要だと感じたからこそ、あえて実行しました。結果、選手たちの心が軽くなり、前に進む力を引き出せたと実感しています。

弱みをさらけ出すことは恥ずかしいことでも、マイナスなことでもありません。むしろ、それを受け入れたうえで自分の力に変えていくことこそ、本当の強さだと思います。そして、そのためには「自分の心を正しく感じる習慣」を日頃から磨いていくことが欠かせません。

私はこれからも、選手たちが弱さを含めて自分を認め、心を最高の状態に整える力を育んでいけるよう、コーチとして全力でサポートしていきたいと思います。

SPORTS BAR FEELFREE オーナー

宮﨑 善幸

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