成功と幸せの違いを見つめる

私が大学院時代にお世話になった恩師が、折に触れて語ってくださった言葉があります。

「成功と幸せは違う。」

この言葉は、当時の私の心に静かに、しかし確かに残りました。

私はその頃、まだ社会に出て働いていたわけではなく、自由に使えるお金も多くはありませんでした。毎日の生活は慎ましく、研究と部活動に集中する日々でした。一方で、世の中では「成功者」と呼ばれる人たちが注目を集めていました。企業の社長や著名な経営者など、経済的な豊かさと権限、そして社会的地位を持つ人々の姿が、メディアを通して大きく映し出されていました。

当時の私は、それが自分とはまったく違う世界のように感じていました。そのような生き方をすごいと思う気持ちはありましたが、心のどこかで「自分が目指すものとは少し違うかもしれない」と感じていたのです。特に強く憧れていたわけではありません。ただ、社会の中で評価されるということ、目に見える成果を出すことが「成功」として語られることには、一定の説得力があるとも感じていました。

そんな私に対して、恩師は「成功者が必ずしも幸せとは限らない」ということを、繰り返し伝えてくださいました。肩書きや収入の多さだけでは、人の幸せは測れない。むしろ、そうした「外側の成功」を追いかけるあまり、自分の心の声を見失ってしまうこともあるのだと。

その言葉を聞きながら、私は「成功すること」よりも、「自分にとっての幸せを大切にすること」を人生の軸に据えて生きていきたいと思うようになりました。

もちろん、努力して目標を達成することや、他者から認められることには大きな価値があります。私自身、スポーツや教育の現場で真剣に結果を追い求めてきました。そして、その過程で得られる喜びや充実感も、私の人生にとってかけがえのないものです。

しかし、それだけでは満たされないこともあるのです。

人とのつながり、自分を信じられる感覚、心からリラックスできる時間、小さな「ありがとう」の言葉。そうした、何気ないけれど確かな幸せが、自分の心を豊かにしてくれるのだと気づくようになりました。

社会の中で生きる以上、成功を求めることは自然なことかもしれません。でも、私は今でもあの恩師の言葉を大切にしています。そして、これからも「これは自分にとって幸せにつながるか?」という問いを持ちながら、一歩一歩を選び取っていきたいと思っています。

「成功と幸せは違う。」

この言葉は、今も私の生き方を静かに支えてくれています。成功を追うのではなく、幸せを感じられる自分でありたい。そう思いながら、日々を大切に生きていきたいと思います。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸


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