承認の力が、人を前に進ませる

私たちは、誰かのたった一言に救われたり、励まされたりすることがあります。
私自身も、自分がやってきたことを承認してもらえたとき、「ほっ」と心が和らぐ瞬間を、何度も経験してきました。
「あなたがいてくれてよかった」
「その頑張り、見ていたよ」
――そんなシンプルな言葉が、今でも私の心に深く残っています。
人は完璧ではありません。迷ったり、間違えたり、立ち止まったりすることもあります。
そんなとき、批判や評価よりも、「承認」の言葉こそが、人を前へ進ませる力になると私は信じています。
スポーツの世界では、毎日の練習がミスの連続です。
そのミスは、「挑戦する勇気」の証でもあります。
その勇気を、コーチがどれだけ承認できるか。それが、選手の挑戦を支える鍵になります。
承認とは、相手の存在をそのまま受け入れ、認めることです。
たとえ過去にどんなことがあっても、いま目の前で頑張っている姿、勇気を出して踏み出した一歩に目を向けて、「いいね」と伝える。
その言葉が、次の一歩を生むエネルギーになるのです。
コーチや教員として日々過ごしていると、選手や学生の姿に心を動かされることがあります。
過去にさまざまな経験をしてきた人が、今、新たな一歩を踏み出そうとしている。
笑顔が戻りつつあり、言葉に力が宿り始めている――その姿は、本当に美しく、嬉しく思います。
そしてまた、苦しいときには無理をせず、自分の心を休めてほしい。
ときには、その場から逃げてもいいのだと思っています。そして誰かに「助けて」という勇気を持つこと。
コーチとして大切なのは、「変わろう」とするその人の想いを信じること。
私たちにできるのは、過去を責めることではなく、「今ここ」に目を向けて、前を向こうとする心に寄り添うことです。
誰かを承認するという行為は、実は自分自身の心もあたためてくれます。
「あなたを信じています」と伝えることで、自分もまた、誰かに信じられていることを思い出せるのです。
48年ぶりに自力でのオリンピック出場を決めた男子バスケットボール日本代表ヘッドコーチ、トム・ホーバス氏。
彼は、目標の達成、目の前の選手の可能性、そして試合の勝利――すべてを「信じること」を信念としています。
私も、ラグビーという競技を通して多くの出会いに恵まれてきました。
勝負の世界は厳しく、結果がすべてのように感じる瞬間もあります。
それでも、本当に大切なのは「人が人を信じる力」だと、今あらためて感じています。
誰かの頑張りに気づいたとき、その想いを言葉にして伝えること。
たったそれだけで、人生が動き出すことがあります。
だからこそ私は、これからも“信じる眼差し”を持ち続けていたいと思っています。
もちろん、私自身も人間です。常に誰かを承認し続けることの難しさも知っています。
だからこそ、まずは自分自身の行動を律し、振り返り、そして「自分」という存在を受け入れて生きていきたいと思います。
この文章が、誰かの心にそっと届きますように。
あなたの一歩は、誰かの希望になります。
そのままのあなたで、大丈夫です。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸