日常のちょっとしたことに尊敬が宿る

尊敬とは、辞書によると「他人の人格や行為をすぐれたものと認めて、その人をうやまうこと」とされています。つまり尊敬とは、相手の地位や実績ではなく、その人の生き方や態度、行動に対して自然と湧き上がる心のあり方なのだと思います。
同じ仕事をしている仲間同士が尊敬し合える関係は、どんな職場やチームにおいてもとても大切です。尊敬し合う関係があるからこそ、信頼が生まれ、協力が生まれ、良い結果を導くことができます。そして、尊敬というものは決して特別な場面で感じるものではなく、日常の中のほんの小さな出来事にこそ宿るものだと感じます。
例えば、飲食店で店員の方に横柄な態度をとっているお客さんを見ると、心が少し寂しくなります。相手の立場に立って考えることができないその姿に、「尊敬」という言葉の対極を見てしまうからです。また、混雑した店内でも笑顔で丁寧に接する店員の方に出会うと、自然と頭が下がるような気持ちになります。それこそが日常の中に宿る尊敬の瞬間です。
スポーツの現場でも同じです。レギュラー選手がメンバー外の選手に対して横柄な態度をとっているチームを見たとき、「レギュラーだから偉い」という価値観に違和感を覚えます。試合に出る人だけでチームは成り立ちません。サポートや練習環境を整える人がいてこそ、チーム全体が機能するのです。だからこそ、立場に関係なく互いを尊重し、尊敬し合うチームが強く、美しいと感じます。
また、言葉では「尊敬しています」と言いながら、日常の行動でそれが感じられない場面にも出会うことがあります。例えば、感謝の言葉が少ない、相手の話を聞かない、約束を守らない。そうした些細なことの積み重ねが、「尊敬のない関係」をつくってしまいます。結局のところ、尊敬とは口で語るものではなく、日々の態度や言葉遣い、相手への配慮によって伝わるものです。
尊敬は、年齢や立場に関係なく、人として持つべき心の姿勢だと思います。しかし人は、他者と比較してしまったり、立場や実績で優劣をつけたりしてしまいがちです。だからこそ意識的に、相手の立場に立ち、相手の努力や背景に思いを馳せることが大切です。その小さな意識の積み重ねが、関係性の質を高めていきます。
そして、お互いに尊敬の念を持てる関係では、遠慮せずに意見を交わせます。間違っていることがあれば、きちんと伝え合い、互いに改善していくことができます。そこに上下関係ではなく、「人としての信頼」が生まれるのです。
尊敬とは、特別な言葉や賞賛ではなく、日常のちょっとした瞬間に宿るもの。何気ない挨拶、感謝の一言、相手の立場を思いやる態度。その積み重ねこそが、人と人との間に温かい信頼と絆を育てていくのだと思います。
SPORTS BAR FEELFREEオーナー
宮﨑 善幸
