聞き手を引き込む話し方と間の使い方

「プレゼン」という言葉の語源は「プレゼント(贈り物)」です。つまり、プレゼンとは自分の考えや思いを相手に贈る行為であり、聞き手にとって価値のある時間を届けることが本質です。だからこそ、聞き手を引き込む話し方が求められます。
では、人を引き込む話し方とは何でしょうか。私が大切にしている答えはとてもシンプルです。それは「プレゼンスキル」よりも「あなた自身の存在そのもの」です。人は言葉や資料以上に、その人のあり方や心からの想いに強く影響を受けます。立派なテクニックや洗練されたスライドよりも、語り手の存在感や信念が聞き手の心を動かすのです。
プレゼンに挑むとき、私たちはつい「どう話せば上手く伝わるか」とスキルを追いがちです。しかし、それ以上に大切なのは「自分が何を伝えたいのか」「なぜ伝えたいのか」を整理することです。そこに自分なりの覚悟や姿勢が生まれたとき、すでに聞き手を引き込む準備は整っています。言い換えれば、あなた自身の存在こそが最大のプレゼントになるのです。
もうひとつ重要なのが「間の使い方」です。話すテンポや間の取り方にはさまざまなテクニックが紹介されていますが、結局は「自分らしい間」を持てるかどうかが問われます。早口で熱量を伝える人もいれば、ゆっくり噛みしめるように語る人もいる。正解は一つではありません。自分の呼吸、自分のリズムを大切にすること。それが自然体の語りとなり、聞き手の心に届くのです。
私はそのことを、戦争を体験した祖母の話から学びました。祖母はプレゼンテーションの本など一度も読んだことがないでしょう。しかし、幼い私に語ってくれた戦争の体験談は、とてもリアルで強く心に残っています。祖母が伝えたかったのは「平和の大切さ」でした。その言葉は、難しい理屈ではなく、祖母自身の体験と心からの想いに裏打ちされたものだったからこそ、幼い私の胸に真っすぐ届いたのです。
「大切な人を守るために戦わざるを得なかった人々の苦しみ」「平和の尊さを次の世代に残したいという願い」。祖母の話には、話法やスキルでは説明できない説得力がありました。そこには「存在そのもの」と「自分なりの間」で語る力があり、まさに聞き手を引き込む話し方の原点がありました。
つまり、聞き手を引き込む話し方とは、特別なスキルや知識を身につけることだけではなく、自分自身と向き合い、自分の言葉で語ることです。そして間の使い方も、型にはめるのではなく、自分らしさを大切にすることが何より重要です。
プレゼンは聞き手への贈り物です。あなたの存在、そして自分なりの間を活かして語ることで、その贈り物は必ず聞き手の心に届きます。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸