育成年代の成功と失敗とは何か?

スポーツの世界における「育成年代の成功と失敗」について考えてみたいと思います。ここで言う育成年代とは、中学生から大学生まで、カテゴリーでいえばU13からU20世代を指します。この時期は身体的にも精神的にも大きく成長する年代であり、指導者や保護者がどう関わるかによって、その後の選手の人生を左右する重要なフェイズでもあります。

よく「ゴールデンエイジ」という言葉が使われます。これはおおよそ9歳から12歳頃を指し、神経系の発達が急速に進み、技術や動作を短期間で効率的に習得できる時期を意味します。この年代は一度覚えた動作を生涯忘れにくいという特徴があり、ボールを扱う感覚や体の使い方を身につけるには最適な時期です。そのため多くのスポーツで「技術を身につける黄金の時間」と呼ばれ、育成において極めて重要視されています。

今回の「育成世代」とは、このゴールデンエイジが終わり、大会などで勝負していく際の考え方です。

では、この育成年代における「成功」とは何でしょうか。私はそれを「シニアレベル、つまりフル代表になったときに、この世代の経験を活かし、勝利をつかみ取ることができること」であると考えています。もちろん育成年代においても試合で勝つことを目指して準備し、全力で戦うことは非常に大切です。しかし結果はコントロールできるものではなく、勝つこともあれば負けることもあります。大切なのは「勝ったか負けたか」そのものではなく、そこから何を学び、どう成長につなげるかです。

むしろ注意しなければならないのは、育成年代での一時的な勝利によって「自分はできている」と勘違いしてしまうことです。この勘違いこそが、成長の停滞を招きます。人間はどの年代であっても未完成であり、常に課題が存在します。にもかかわらず「自分はもうできる選手だ」と思い込んでしまうと、向上心を失い、伸びしろを自ら閉ざしてしまいます。

サッカーの世界でも同じような事例があります。例えば中学や高校年代で全国優勝を経験した選手が、将来的にプロや代表で伸び悩むケースは珍しくありません。その一方で、育成年代では目立たなかったものの、コツコツと努力を積み重ねてプロ入りし、代表選手にまで成長した選手も多く存在します。つまり育成年代での勝敗や結果が、そのまま未来の成功に直結するわけではないのです。ここで大切なのは「結果よりも経験」であり、その経験をどう自分の成長に変換していくかにかかっています。

本当の意味での「勝利」とは、試合に勝つことだけではありません。最終的には「自分の人生の勝者になること」が大切だと私は考えています。スポーツの経験を通じて、自分の限界に挑戦し、仲間と協力し、苦しさを乗り越える力を学ぶ。その過程で得たものが、社会に出てからの人生を支える大きな力になります。

だからこそ、育成年代の「失敗」は決して無駄ではありません。試合に負けたり、選抜に漏れたりする経験こそが、将来に向けた大切な糧となります。負けを通して努力の不足を知り、自分の課題を見つけることができる。そうした経験を次に活かすことができれば、それはむしろ「成功」だと言えるのです。

育成年代における真の成功とは、勝敗の結果ではなく、その経験を人生の歩みにどうつなげていけるかです。例え試合に負けても、その経験が将来の自分を強くし、人生を切り拓く力となるならば、それは紛れもなく成功なのだと私は思います。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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