自分が指導した選手の成長に感動した話

自分が指導した選手の成長に感動した話
私は23歳から大学ラグビーのコーチをスタートし、それから様々なカテゴリーの選手に指導をさせていただきました。
先日、私の母校である国際武道大学ラグビー部の40周年記念パーティーが開催され、参加してきました。久しぶりにお会いする先輩方や、私がコーチとして選手とともに戦ったOBの方々と楽しい時間を過ごしました。
その会は三次会まで続き、思い出話や近況報告が盛り上がりました。その中で特に印象に残ったのが、ある選手の話です。彼は現在、自分で会社を立ち上げ、社長として活躍しています。しかし、彼自身の成長には苦難の時期があったそうです。
大学時代から彼はプライドがあり、弱みをさらけ出すことが苦手なタイプでした。卒業後、企業に就職した彼は、営業の成績が全く振るわず悩み続けていたそうです。さらに、同期や先輩の中にはパニック障害や自律神経失調症、不眠症に苦しむ社員もいて、職場全体がプレッシャーに包まれていました。
「もう退職するか、自分が壊れるかの瀬戸際でした」と彼は振り返ります。実際、退職届を胸ポケットに忍ばせ、背水の陣の覚悟で毎日を過ごしていたそうです。それでも、「Do your best」という言葉を頭に浮かべ、なんとか踏ん張り続けたのは、国際武道大学ラグビー部で培った精神が支えてくれたからだと言います。
そんなある日、彼は意を決して年下の女性社員に「どうやったら営業がうまくいくのか?」と破れかぶれに尋ねました。彼女は「わからない!」とあっさり答えたそうです。この何気ないやり取りが彼にとって大きな転機となりました。
それまでは自分のプライドが邪魔をして、誰かにアドバイスを求めることができませんでした。しかしこの一歩をきっかけに、周りからの助言を素直に吸収し、受け入れられるようになったのです。すると徐々に営業成績も向上し、最終的には独立するまでに至りました。
「今思えば、周りには助けてくれる人や支えてくれる人がたくさんいたんです。でもその時はそれに気づかず、意地になっていました。プライドを捨てたことで、自分の殻を一枚破ることができたんだと思います」と彼は語りました。
また彼は、「次の会社では最年少管理職になれましたが、それは周りのアドバイスだけではなく、自分自身が『受け入れる姿勢』を持てたからだと思います」とも話していました。確かにどんなに的確なアドバイスでも、受け止める側が変わらなければ何も変わりません。
このエピソードから私が感じたのは、人の成長は遅れてやってくること、そしてどんな経験も無駄ではないということです。彼はこれからも成長し続け、10年後も自身を改善し続けて前進していくことでしょう。
また、私は彼の話から「いらないプライド」について改めて考えさせられました。もちろん生きる上で「ポリシー」「信念」「筋」「プライド」「意地」は大切です。しかし、必要以上のプライドや意地は成長を妨げます。似て非なるものを見極め、自分に必要なものを大切にする。彼の話は、そんな大切な教訓を私に教えてくれました。
このような選手の成長に触れるたびに、コーチという仕事のおかげで出会った選手に感謝しています。これからも、彼のように自身を乗り越えて成長していく選手たちを応援していきたいと思います。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸