自分の強みを磨くために必要なこと

自分自身の強みを磨くために最も大切なこと――それは、「本番で試す」ということだと私は考えています。

大学院時代、私がお世話になった恩師から、学会発表の直前にこんな言葉をいただいたことがあります。

「いつまでもプールで泳いでいたら、海ではいつまで経っても泳げない。」

少し抽象的に聞こえるかもしれませんが、これは「練習環境が本番の環境と異なるままでは、本当の意味で強みを発揮することはできない」ということを教えてくれた言葉です。

例えば、ラグビーの練習を例に挙げてみましょう。プレッシャーのない状況で自分の強みを発揮し、成功体験を積むことは確かに大切です。しかし、そのプレッシャーの強度が本番の試合と大きく異なっていれば、本番で同じように強みを活かすことはとても難しくなります。実際、いくら練習でうまくできていても、本番特有の緊張感や、相手からの激しい圧力の中では、普段どおりの力を発揮できない選手も少なくありません。

ここで重要なのは、そうした状態に陥ったとき、「選手のせい」にしてしまわないことです。むしろ、その環境を整えるのはコーチの役割であると私は考えています。

練習で力を発揮していた選手が試合でうまくいかないとき、その原因の多くは「本番に近い環境で強みを試していない」ことにあります。選手が安全で快適な場所でしか練習できていなければ、当然ながら限界を超えるような経験はできません。ですから、コーチである私たちは、あえて負荷の高い状況を設定し、本番さながら、あるいはそれ以上の緊張感を持って強みを試せる環境を用意する責任があるのです。

これはスポーツに限らず、仕事や日常生活の中にも当てはまることです。自分の得意なことや長所を伸ばしたいのであれば、安心できる環境の中だけでなく、少しチャレンジングな場面に身を置き、あえて試されるような機会を自ら作っていくことが求められます。そうした経験を積み重ねることで、強みは磨かれ、本物の力へと変わっていきます。

もちろん、最初から本番のような厳しい環境で完璧にできる人はほとんどいません。失敗や挫折を繰り返しながら、少しずつ成長していくのが自然な姿です。しかし、その過程を避けていては、本物の強みは手に入りません。プールで泳ぐだけでなく、海での泳ぎ方を身につけ、波に飲まれてもなお挑み続ける――そんな経験こそが、強みをホンモノにしてくれるのです。

私自身も、自分の強みをさらに磨くために、プレッシャーのある「本番」に近い環境で、さまざまな挑戦を続けていきます。プレッシャーや困難を恐れずに挑戦を重ねること。それが、自分の強みを一層輝かせるきっかけになると信じています。

快適な練習(日常)から一歩抜け出し、本番以上のプレッシャー(自分が強みを発揮したいステージ)に挑みながら、心と体を鍛えていきましょう。選手の力を信じ、その力を最大限引き出せる環境をつくることが、私たち指導者の使命です。

SPORTS BAR FEEL FREE オーナー
宮﨑 善幸

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