良い関係性を築くための基本的なコミュニケーション術

コーチと選手、上司と部下、あるいは友人や家族との間でも、良い関係性を築くことはとても大切です。人と人が関わる限り、信頼関係が土台になります。そして、その信頼関係を育てるための基本にあるのが「コミュニケーション」です。
では、コミュニケーションとは何か?多くの人が「話す力」や「伝える力」をイメージするかもしれません。しかし、私にとってコミュニケーションの定義はとてもシンプルです。それは「聴くこと」です。相手の話をしっかり聴くことこそが、すべてのスタートだと考えています。
私にその大切さを日々教えてくれる存在がいます。それは、私がコーチングをさせていただいている幼稚園児たちです。子どもたちは毎回、本当にいろいろなことを報告してくれます。「今日はこんなことがあったよ」「こんなおもちゃで遊んだんだよ」と、一生懸命に伝えてくれます。そんな時に、子どもだからといって適当に流したり、形だけ耳を傾けているような態度をとると、すぐに伝わってしまいます。幼稚園児たちはごまかしが効かない存在なのです。
大人同士の場合は、時に「表面的な信頼関係」を築いてやり過ごすことがあるかもしれません。お互いに建前を保ちながら、形だけのやり取りで成り立つ関係性も世の中には存在します。しかし、子どもとの関係ではそれが通用しません。しっかりと「聴く」姿勢を持って向き合わなければ、こちらの言葉にも耳を傾けてもらえないのです。
言い換えれば、真剣に耳を傾けることで、子どもたちは安心し、こちらの話にも耳を傾けてくれるようになります。そこに信頼関係が生まれます。このやり取りはシンプルでありながら、人間関係の本質を突いていると私は感じています。
幼稚園児と接する度に、改めて「聴くこと」がコミュニケーションであることを強く認識します。こちらが聴く姿勢を示せば、相手も聴いてくれる。これは子どもに限らず、選手や部下との関係でもまったく同じです。選手が「自分のことを理解してくれている」と感じた時、はじめてコーチのフィードバックが心に届きます。部下が「上司は自分の意見を聴いてくれる」と感じた時、はじめて主体的に動くようになります。
多くの人は「どう話すか」に意識を向けがちですが、実際には「どう聴くか」がより大切です。相手の言葉を遮らず、評価せず、最後まで受け止める。その上で必要な言葉を返す。そうした積み重ねが信頼を築き、強固な関係性を育てます。
良い関係をつくるための基本的なコミュニケーション術とは、特別なテクニックではありません。「聴くこと」から始めるという、極めてシンプルな姿勢です。しかし、そのシンプルさを徹底できるかどうかが、人間関係の質を大きく左右します。私はこれからも、幼稚園児から学んだ「聴く」という姿勢を忘れずに、あらゆる人との関係を築いていきたいと思います。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸
