説得力を高めるストーリーテリングの技術

プレゼンテーションを組み立てるときに、「物語のように語る」ことができる人は、相手に対して強い説得力を持ちます。これを「ストーリーテリング」と言います。プレゼンが上手い、わかりやすい、そして面白いと感じる人の共通点は、このストーリーテリングの技術を身につけていることです。
先日、私のゼミナールに特別講師としてお招きした方がいました。その方はなんと、パワーポイントを一切使わずに90分間の授業を行ってくださいました。スライドなしで90分というと、聞き手を飽きさせずに話を展開するには、相当な構成力と話術が求められます。ところが、その方の話は終始わかりやすく、まったく飽きませんでした。話を聴いているうちに、自然と頭の中に情景が浮かんでくるような語り方。まるで映画のワンシーンを見ているような感覚でした。イメージが浮かぶからこそ、話に引き込まれ、そして説得力を感じたのです。
授業後、私はその方に質問しました。
「プレゼンテーションの勉強はされていますか?」
すると、即答で「めっちゃやってます!」という答えが返ってきました。落語を聞いたり、プレゼン技法の本を読んだりして、常に学び続けているとのことでした。話が上手な人ほど、実は“話す練習”を怠りません。天性の話し上手ではなく、学びと経験の積み重ねが“聞かせる話術”をつくるのだと改めて感じました。
その方のお話で特に印象的だったのは、「間(ま)」の使い方です。話のテンポが一定ではなく、重要な部分ではしっかりと間を取る。聴き手が考える時間、想像する時間を与える。これがあることで、言葉の重みが増し、聴く人の心に残ります。落語や演劇、さらにはスポーツの名スピーチにも共通することですが、「間」は“沈黙”ではなく、“聴き手と共有する呼吸”なのです。
ストーリーテリングは、単に話を面白くする技術ではありません。相手の心に“映像を描かせる技術”です。数字やデータ、論理だけでは届かない“感情”の部分を動かす力があります。プレゼンにおいて重要なのは、「理解させること」ではなく「共感してもらうこと」です。そのためには、自分の体験や感情を交えて語ることが欠かせません。
ストーリーテリングの基本は、「起承転結」を意識すること。どんな話にも始まりと展開、そしてメッセージの着地点があります。自分の経験をどう構成するか、どんな場面描写を使うかを意識するだけで、聞き手の心の動きは大きく変わります。
プレゼンは、情報を伝える場ではなく、想いを届ける場です。ストーリーテリングの力を磨くことは、相手の心を動かし、行動を変える“伝える力”を育てることにつながります。これからの時代、データよりも「物語」が人を動かす時代。話す力を磨くとは、つまり“自分自身を磨く”ことでもあるのです。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸
