選手の自信を引き出すためにコーチができること

スポーツで勝つためには、選手自身が自分に自信を持つことが欠かせません。では、その「自信」とは一体何でしょうか。辞書的に言えば「自分の力を信じること」となりますが、単に「できる」と思い込むこととは違います。私の考える自信とは、「積み重ねた努力や経験によって、自分ならば必ずやり遂げられるという確信」を持てる状態のことです。裏付けのない自信は一時的に心を奮い立たせるかもしれませんが、厳しい場面では簡単に崩れてしまいます。真の自信は、日々の取り組みの中で得られる小さな成功や失敗の経験の積み重ねによって育まれていくものなのです。
コーチの役割の一つは、この自信を選手の中から引き出してあげることです。選手が自分の無限の可能性に気づき、それを信じられるようにサポートしていくことこそ、コーチングの本質だと思います。私が考える「自信を育むためのコーチのアプローチ」は以下の三つです。
① コーチは選手の無限の可能性を信じ続ける
まず大前提として、コーチ自身が選手を信じることです。どんなに自信を持てずに苦しんでいる選手であっても、その選手には必ず強みがあり、伸びしろが存在します。弱みさえも成長の糧になり得ます。だからこそコーチは、選手の表面的な状態に左右されるのではなく、「この選手は必ずやれる」と信じ続けることが必要です。選手は、自分を信じてくれる存在がいると分かることで、一歩を踏み出す勇気を得ます。そしてその勇気が、自信の芽となっていくのです。
② 習うより慣れろ ― 経験の積み重ねが自信を育てる
いくら知識や技術を習ったとしても、それを本番のプレッシャーのかかった場面で発揮できるとは限りません。大切なのは「慣れること」です。ラグビーには「キャップ数」という考え方があります。これは代表戦への出場数を表す単位ですが、ワールドカップのような大舞台で戦うためには、このキャップ数の多さが重要だと言われます。つまり、どれだけ経験を積んできたかが、自信の裏付けになるということです。これは代表選手に限らず、すべての選手に当てはまります。練習や試合の量を積み重ねることによって、選手の中に「これだけやってきたのだから大丈夫だ」という揺るぎない自信が少しずつ育まれていきます。
③ 選手に出番をつくる
そして最後に、選手が自信を身につけるためには「実際の場で挑戦する経験」が欠かせません。いくら練習を積んでも、実戦の中でしか得られない学びがあります。コーチの役割は、選手の状態を見極めながら、適切な時期に適切な出番を創ることです。試合に出れば成功も失敗も経験します。大切なのは、その一つひとつの挑戦を選手がどう受け止めているかをコーチが寄り添い、問いかけ、導いていくことです。「失敗しても挑戦したこと自体に価値がある」と伝え続けることが、次のチャレンジにつながり、やがて自信の積み上げになります。
まとめると、選手の自信を引き出すためにコーチができることは「信じる」「経験させる」「挑戦の場を創る」という三つに尽きます。自信は一夜にして得られるものではなく、日々の積み重ねの中で形づくられていきます。コーチがそのプロセスを信じて寄り添い続けることで、選手は自分の中に眠る可能性に気づき、やがて確かな自信を手にしていくのです。その自信こそが、スポーツの世界で勝利をつかむための最大の武器になると私は考えています。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸