2-1-1 メンタリングとは何をする営みなのか

メンタリングとは、「相談を受け、答えを与えるのではなく、相談者と共に考え、その人自身の答えを導き出していく営み」です。メンタリングは、正解を示す行為ではありません。むしろ、その人の中にすでに存在している可能性や力を信じ、引き出していく関わり方だと考えています。
相談することは、一見すると簡単な行為に見えます。しかし実際には、自分の弱さを認める勇気や、信頼できる相手に出会えるかどうかといった高いハードルがあります。だからこそメンタリングにおいて最初に必要なのは、「安心して話せる関係性」をつくることです。
組織開発や人材育成の分野で知られる 人を育てるとはどういうことか の中で、エドガー・H・シャインは、人を育てるとは「相手をコントロールすることではなく、学びが起きる関係性をつくること」だと述べています。また Helping(人を助けるとはどういうことか) においても、支援とは上下関係ではなく、相手の尊厳を守りながら寄り添うプロセスであると語られています。これは、メンタリングの本質そのものだと感じています。
メンタリングにおいて大切にしている考え方の一つに、福島正伸氏の示す「見本・信頼・支援」という三つの軸があります。
まず「見本」とは、言葉で教える前に、自分自身が行動で示すことです。どれほど立派な助言も、行動が伴わなければ相手の心には届きません。メンターはまず、自らの姿勢や生き方を通して示す存在である必要があります。
次に「信頼」です。福島氏は「人の無限の可能性を信じ続けること」が人をはぐくむ出発点だと語っています。期待ではなく信頼を置くこと。先回りして結果を求めるのではなく、「この人なら大丈夫だ」と信じて待つ姿勢が、相手の主体性を育てます。信頼されていると感じたとき、人は自らの力を発揮し始めるのです。
そして「支援」。支援とは、すべてを教えることではありません。困ったときにそっと手を差し伸べ、考えるためのヒントを渡すことです。シャインが述べるヘルピングの本質もまた、「相手の問題を奪わない支援」にあります。過剰な支援は成長の機会を奪ってしまいます。見守る勇気こそが、真の支援なのです。
メンタリングは、短期的な成果を求める営みではありません。目の前の停滞や失敗も、その人にとって必要なプロセスだと信じ、未来の姿を思い描きながら関わり続けることが求められます。人は誰もが、自分でも気づいていない無限の可能性を持っています。メンタリングとは、その可能性を信じ続け、本人が自ら歩き出す瞬間を待つ、静かで力強い営みなのです。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸
