2-3-10 同じ関わりが、すべての人に届くわけではない

人を育てる場では、「全員に同じように接することが公平である」と考えがちです。しかし、同じ言葉をかけ、同じ課題を与え、同じ機会を用意したとしても、それがすべての人に同じように届くとは限りません。

人はそれぞれ、性格、経験、得意なこと、苦手なこと、物事の受け止め方が異なります。自信を持てずにいる人もいれば、自信はあっても周囲との関係に悩んでいる人もいます。励まされることで力を発揮する人がいる一方、励ましの言葉をプレッシャーとして受け取る人もいます。

つまり、同じ関わりが、ある人には力になっても、別の人には負担になることがあるのです。

指導や支援において大切なのは、方法を一律にすることではなく、目の前の人に合わせて届け方を変えることです。たとえば、同じ目標に向かっていても、必要なアプローチは人によって異なります。具体的な手順を示すことで動きやすくなる人もいれば、自由に考える時間を与えられることで力を発揮する人もいます。背中を押してほしい人もいれば、少し距離を置いて見守ってほしい人もいるでしょう。

これは、リーダーを育てる場面でも同じです。

若い人に役割を任せれば、誰もがすぐにリーダーシップを発揮できるわけではありません。自分の強みをまだ理解できていない人には、自分を振り返るための対話が必要です。失敗への不安が強い人には、安心して挑戦できる環境が必要です。経験を通じて学ぶことが得意な人には、実際に決断し、行動する機会が必要になります。

重要なのは、役割を与えることだけではなく、「その人が力を発揮するためには、どのような支援が必要なのか」を考えることです。

家庭や教育の場においても、同じことがいえます。教えることが必要なときもあれば、問いかけることが必要なときもあります。すぐに助けることが支援になる場合もあれば、本人が考える時間を待つことが支援になる場合もあります。正しいと思う方法を一方的に当てはめるのではなく、相手の反応を見ながら関わり方を調整していく姿勢が求められます。

ただし、相手によって関わり方を変えることは、基準を曖昧にすることではありません。目指す方向や大切にする価値は共有しながら、そこに至るまでの方法を柔軟にするということです。

「目的と基準は共有し、関わり方は個別にする」

この考え方が、多様な人が共に成長するための土台になります。

そして、支援する側だけが工夫すればよいわけでもありません。支援を受ける側も、与えられた言葉をそのまま受け入れるのではなく、自分にとってどのような意味があるのかを考えることが大切です。言葉は答えではなく、自分自身を成長させるためのヒントだからです。

人を育てるとは、自分の方法に相手を合わせることではありません。その人を理解し、その人に届く言葉や機会を探し続けることです。一人ひとりの違いを尊重しながら、可能性が動き始めるきっかけをつくる。その丁寧な積み重ねこそが、本当の意味で人を育てる関わりなのだと思います。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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