2-3-2 管理型マネジメントの限界

前節では、これまでスポーツの現場で常識とされてきた「指導者主導型の指導」がなぜ通用しなくなってきたのかについて述べました。そこには、社会の価値観の変化やコーチング概念の広がりが大きく影響していました。本節では、その流れを踏まえながら、「管理型マネジメント」の限界について考えてみたいと思います。
そもそも「管理職」とは何を管理する存在なのでしょうか。一般的に管理型マネジメント(Control型)とは、「人を管理することで成果を生み出す」ことを目的としたマネジメント手法です。この考え方では、上司や指導者が中心となり、組織をコントロールすることで成果を上げようとします。具体的には、上司が指示や命令を出し、ルールや評価制度を用いて人を動かし、できるだけ失敗を減らすことを重視します。そして、意思決定の権限は上位に集中し、組織は「言われたことを実行する集団」として機能します。
このようなマネジメントは、一定の秩序を保つという意味では有効に機能する場面もあります。しかし、変化が激しく、瞬時の判断が求められる環境では限界があると言われています。福島正伸氏は、従来の管理型マネジメントに対して、「メンター型」と呼ばれる支援型マネジメントの重要性を提唱しています。メンター型マネジメントでは、人を管理するのではなく、人の可能性を信じ、主体性を引き出すことを重視します。そこでは、挑戦することを支援し、失敗を学びの機会として捉える文化が育まれます。また、権限を適切に委ねることで、個人が自ら考え行動する組織をつくることを目指します。
この考え方は、スポーツの現場にも非常に通じるものがあります。スポーツの試合では、すべての状況を指導者がコントロールすることはできません。試合の中では刻々と状況が変化し、プレーの判断を行うのは現場にいる選手自身です。どれほど優れた戦術があったとしても、実際の局面で判断を下すのは選手であり、その判断力こそが競技力の大きな要素となります。
しかし、試合の場面で突然そのような判断ができるようになるわけではありません。選手が自ら考え、判断し、行動する力は、日々のトレーニングやチーム活動の中で繰り返し育まれていくものです。もし日常の練習で常に指導者がすべてを決め、選手が指示に従うだけの環境であれば、試合の場面で主体的に判断する力を育てることは難しくなってしまいます。
スポーツは勝敗を競うものではありますが、それだけが目的ではありません。スポーツは人生を豊かにするための大切なツールでもあります。自分の可能性に挑戦し、努力を重ね、困難を乗り越える経験は、人が生きていく上での勇気や自信につながります。そして、スポーツの中で身につけた自立心や主体性は、競技を離れた後の人生においても必ず役立つものです。
だからこそ、その過程を支える指導者のあり方が重要になります。選手の主体性を尊重し、挑戦を支援することは大切ですが、それは決して放任することとは違います。組織の責任を負うのは上司であり、チームを率いる責任を持つのはコーチです。指導者には、方向性を示し、環境を整え、選手が成長できる場をつくる責任があります。その上で、選手に考える機会を与え、主体的な行動を促していくことが求められます。
これからのスポーツ指導においては、人を管理することによって成果を出す時代から、人の可能性を引き出すことで組織を成長させる時代へと移行していくことが求められています。管理型マネジメントの枠組みを超え、支援型のリーダーシップを発揮できる指導者こそが、これからのスポーツ現場において重要な存在になっていくのではないでしょうか。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸
