3-4-1 自己肯定感はなぜ揺らぐのか

自己肯定感とは、自分の長所や成功だけを評価することではありません。弱さや失敗、不完全さも含めて、「これが自分である」と受け入れる感覚です。しかし、この感覚は常に一定ではなく、周囲の言葉や出来事によって揺れ動きます。

自己肯定感が揺らぐ大きな理由の一つは、自分の価値を他者の評価に委ねてしまうことです。褒められれば自信を持ち、否定されれば自分には価値がないと感じる。こうした状態では、周囲の反応が変わるたびに心も不安定になります。

特に現代は、SNSを通じて多くの情報が絶えず届く時代です。そこには、他人の成功や幸せそうな瞬間が切り取られて並んでいます。それらと日常の自分を比較し、「自分は努力が足りない」「自分だけが取り残されている」と感じることもあるでしょう。また、根拠のない批判や否定的なコメントに傷つき、自信を失ってしまうこともあります。

だからこそ必要になるのが、「鈍感力」です。

鈍感力とは、周囲の声や環境の変化に過剰に反応せず、自分らしさを保つ力です。作家・渡辺淳一氏の著書『鈍感力』によって広く知られるようになりました。「鈍感」という言葉には、反応が鈍いという否定的な印象もありますが、ここでいう鈍感力は、他者の意見をすべて無視することではありません。

大切なのは、何を受け入れ、何を受け流すかを自分で選ぶことです。成長につながる助言には耳を傾ける一方で、根拠のない批判や悪意のある言葉まで心の中に抱え込まない。その選択が、自分の心を守ることにつながります。

特にリーダーやコーチなど、人前に立つ立場にある人は、さまざまな意見や評価にさらされます。そのすべてに真摯に応えようとすれば、心は次第にすり減ってしまいます。ときには「あえて気にしない」と決め、自分が本当に大切にしたい価値観や目的へ意識を戻すことも必要です。

一方で、自己肯定感を安定させるためには、他者の評価から距離を取るだけでなく、自分から小さな行動を起こすことも有効です。その一つが「小さな親切」です。

急な坂道で重い荷物を抱えている人や、駅の階段で困っている高齢者を見かけたとき、「何かお手伝いしましょうか」と声をかける。その行動は、相手の負担を軽くするだけでなく、行動した本人の心も温かくします。相手から感謝されるために行うのではなく、「少しでも助けになるかもしれない」と考えて一歩を踏み出すことに意味があります。

人は一人だけで生きていくことはできません。誰かに支えられ、ときには誰かを支えながら生きています。他者のために大きなことを成し遂げようとしなくても、自分がしてもらったら嬉しいことを、自分から行動に移すことはできます。その積み重ねによって、「自分も誰かの役に立てる」という実感が生まれます。

自己肯定感は、他人から与えられる評価だけで育つものではありません。自分の価値観に沿って行動し、その行動を自分自身で認めることによって、少しずつ育っていくものです。

周囲の声をすべて背負わない鈍感力と、目の前の人を思いやる小さな親切。一見すると反対のようですが、どちらも「自分の心を自分で整える」という点でつながっています。

他人の物差しだけで自分を測らず、自分の声に耳を傾ける。そして、できる範囲で誰かのために行動する。その日々の選択が、揺らぎながらも折れにくい、穏やかな自己肯定感を育ててくれるのです。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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