3-6-3 支える人こそ支えが必要

人を支える立場に立つ人は、強くなければならないと思われがちです。コーチ、メンター、教師、管理職、親など、人の成長や挑戦を支える役割を担う人ほど、「自分がしっかりしなければ」「弱音を見せてはいけない」と考えてしまうことがあります。しかし、本当に長く人を支え続けるためには、支える側にも支えが必要です。
人を育てる仕事は、知識や技術を伝えるだけではありません。相手の不安や葛藤に寄り添い、時には励まし、時には厳しい言葉をかけながら、その人の可能性を信じ続けることが求められます。その責任は決して小さなものではなく、支える側も迷いや不安、孤独を感じることがあります。
だからこそ、支援する立場の人にも相談できる相手や、自分を振り返る時間が必要です。世界のトップアスリートや経営者がコーチをつけるように、優れたコーチやメンターほど、自分自身にもコーチやメンターを持っています。それは能力が不足しているからではありません。より良い支援者であり続けるために、自分自身も学び、成長し続ける必要があるからです。
一方で、メンタリングにはもう一つ大切な視点があります。それは、「メンティこそメンターである」という考え方です。
一般的には、メンターが教え、メンティが学ぶという関係として捉えられます。しかし実際には、その関係は一方向ではありません。メンターはメンティと向き合う中で、自らの考え方や価値観を見つめ直し、多くのことを学んでいます。
メンティから投げかけられる素朴な質問によって、自分が当たり前だと思っていたことを改めて考え直すことがあります。思い通りに進まない場面では、「伝えること」と「伝わること」の違いに気づかされます。また、世代や経験の異なる相手と関わることで、新しい価値観や発想に触れ、自分自身の固定観念が揺さぶられることも少なくありません。
つまり、メンティは学ぶ存在であると同時に、メンターを成長させる存在でもあるのです。
優れたメンターほど、「育てている」という感覚よりも、「共に育っている」という感覚を持っています。相手の成長を支えようとする過程で、自分自身も忍耐力や傾聴力、問いを立てる力、信じて待つ力を磨いていきます。人を変えようとするのではなく、自らも変わり続ける姿勢こそが、良いメンターの条件なのかもしれません。
また、メンタリングにおいて重要なのは、「期待」ではなく「信頼」です。「こう成長してほしい」という期待が強くなりすぎると、それは無意識のプレッシャーとなり、相手の可能性を狭めてしまうことがあります。一方で、「この人ならきっと成長できる」と信じて見守る姿勢は、相手が自分らしく挑戦する安心感につながります。
信頼とは、結果を急がず、その人の可能性を信じ続けることです。成長にはそれぞれのペースがあり、遠回りに見える経験が、後になって大きな力になることもあります。その過程を信じて待つことができる人こそ、本当の意味で人を支えることができるのでしょう。
人を育てるという営みは、一人で完結するものではありません。支える人が支えられ、教える人が教えられ、育てる人が育てられる。その循環があるからこそ、人も組織も持続的に成長していきます。
支える人が孤独にならず、学び続ける環境を持つこと。そして、目の前のメンティからも学ぶ謙虚さを忘れないこと。それが、人を育てる文化を築く第一歩となります。
人は、人を育てることで育ち、人に支えられることで支える力を身につけます。
メンターにもメンターが必要であり、メンティもまたメンターを育てる存在です。その相互成長の関係こそが、コーチングやメンタリングの本質であり、人を育てる営みの最も大きな価値なのではないでしょうか。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸
