転機をチャンスに変えた経験

私が人生の転機をチャンスに変えた経験は、27歳の時のことです。当時、私は母校である大学で助手として働いていました。この助手職は2年間の期限付き契約で、期間中は教員として働きながら、ラグビー部のコーチを務め、さらにコーチングに関する研究を進めていました。将来的にはこのまま大学に残り、教員の職を得ることで、ラグビー部の指導と研究を継続していくつもりでした。
しかし、予定とは異なる現実が待っていました。2年間の任期が満了となる年度末の3月、私は継続して契約が更新されることを信じていたにもかかわらず、大学側から契約満了による退職を告げられました。その瞬間、頭が真っ白になり、計画していた未来がすべて崩れ去ったように感じました。
それまでの人生は比較的順調で、自分で決めて選んだ環境の中で努力し、結果を出してきました。しかし、この時初めて「何もかも失う」という感覚に直面し、将来の展望が全く見えなくなったのです。
ただ、この状況の中で私は一度冷静になり、自分自身と向き合う時間を持ちました。そして、仕事がなくなったことを嘆くのではなく、自分にできることや可能性を考え始めました。すると、これまでの経験やスキルを基にすれば、自分が挑戦できる選択肢がいくつも存在することに気づきました。具体的には、ラグビーの指導者としてのキャリアを国内外で広げることや、新たな分野での学びに挑戦することなど、10以上の選択肢が浮かびました。失業という状況が、むしろ「なんでもできる自由」を手に入れるきっかけになったのです。
そんな中、4月になって間もなく、思いがけないチャンスが舞い込んできました。男子ラグビー日本A代表がニュージーランドで行う遠征に、トレーナーとして帯同する仕事を任されることになったのです。この遠征は4月中旬から開始され、私は再びラグビーの現場に立つことができました。失業のショックから立ち直り、改めて自分の専門性を活かせる場を得られたことに、深い喜びと感謝を覚えました。
さらに、このニュージーランド遠征がきっかけとなり、6月には南アフリカで世界初のU21ワールドカップが開催される際に、U21日本代表のトレーナーとして参加する機会も得ました。世界の舞台で働く経験を積むことができたのは、この時期の大きな収穫でした。もし、大学での助手職が継続していたならば、こうした国際的な経験を得ることは難しかったかもしれません。
この一連の出来事を振り返ると、「失業」という出来事は一見するとネガティブなものに思えますが、それは新たな挑戦への扉でもありました。安定した環境が失われたことで、自分の可能性を広げる自由を手に入れ、結果的に自分のキャリアをさらに高める機会を掴むことができたのです。
27歳のこの経験は、私にとって人生の価値観を大きく変える出来事となりました。困難に直面した時こそ、自分の可能性を信じ、新たな挑戦に一歩踏み出す勇気を持つことが重要だと学びました。この教訓は、現在の私の人生や仕事の中でも生き続けています。転機を前向きに捉え、それをチャンスに変える力を持つことが、人生を豊かにする鍵であると強く感じています。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸