世界から学ぶ視点と経験

セブンズラグビーはオリンピック種目であり、その世界最高峰の大会が「HSBC SVNSシリーズ」です。世界7か国を転戦し、年間チャンピオンを決定するこのシリーズに、女子セブンズ日本代表「サクラセブンズ」は2015年から参戦しています。

世界の舞台では、わずかなミスが得点に直結し、その一つが勝敗を分ける厳しさがあります。そうした中、2025年、サクラセブンズは世界トップ4にもなり、最終的に世界ランキング5位という過去最高の成績を収めました。最終ステージであるグランドファイナルでは7位という結果でしたが、世界3位のフランスに勝利するという快挙を成し遂げました。

この成果は、決して突然の成長ではありません。幾度となく世界に挑み続け、地道に積み重ねてきた努力の結晶です。私自身もこれまで、コーチやマネジメントの立場で何度も世界の壁に挑んできましたが、世界トップ4の壁を越えることはできませんでした。

パリオリンピック後に新たに編成されたチームは、「繋(つなぐ)」をテーマに、一つひとつのプレー、一人ひとりの想いを大切にしながら戦い抜き、ブレイクスルーを続けてきました。その姿は本当に素晴らしく、心から敬意を表します。そして、挑戦し続けてくれていることに、深い感謝の気持ちが湧き上がってきます。ありがとう。

昨年、世界一とも称されるニュージーランド代表が、準決勝でオーストラリアに敗れた試合がありました。試合開始早々、10代から代表として活躍していたスター選手がレッドカードで退場し、チームは最終的に3位という結果に終わりました。

その試合後、ニュージーランドのヘッドコーチが退場した選手に近づき、抱きしめながら何かを囁いていた姿が、今でも印象に残っています。重大なミスが試合結果に大きな影響を与えたとき、指導者が選手にどう接するかは極めて重要です。叱るのか、見守るのか、寄り添うのか――正解は一つではありません。

大切なのは、その経験を選手自身が次にどう活かすか。そしてそれが、競技力の向上にとどまらず、自身の人生を豊かにする学びへとつながるかどうかです。

私はどうしても、あのときコーチが選手に何と声をかけたのかが気になり、滞在先のホテルで本人に直接尋ねました。彼は少し微笑んで、

「I LOVE YOUと彼女に伝えた」答えてくれました。

その言葉は、私にとってまったく予想外のものでした。しかし、国や文化が異なっていても、人を導く根本にあるのは同じだと気づかされました。それは、「愛」です。

人と関わる上で最も大切なもの――それはやはり「愛」であるということを、私は世界一のコーチから学びました。

勝負の世界に身を置いていると、つい「勝ち方」や「強さ」ばかりに目が向きがちです。しかし、その根底にあるのは、人と人との信頼、尊重、思いやりであり、それなくして本当の強さにはたどり着けないのだと、あらためて実感しました。

そしてもう一つ、忘れてはならないのが「愛=許し」という視点です。ミスや失敗は、誰にでもあります。だからこそ、指導者がその瞬間にどう接し、選手がどう受け止めるかが、その人の未来を大きく左右します。

許されることで、初めて人は自分を受け入れ、再び前を向くことができます。

ちなみにこの選手は、昨年開催されたパリオリンピックで見事金メダル獲得に貢献し、今年も世界優秀選手に選出されるほどの成長を遂げました。

これからも私は、世界から学び、選手たちと共に、「愛」と「許し」をもって成長を続けていきたいと思います。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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