強化とは何か?

今回は、私がこれまで競技スポーツに携わってきた中で、特に印象に残っている「強化」という言葉について、少しお話ししたいと思います。

2011年から、私はオリンピック種目であるセブンズラグビーの女子日本代表チームに、ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチとして関わる機会をいただきました。選手の身体づくりやコンディショニング、そしてチーム全体のパフォーマンス向上を目的に、現場の最前線で試行錯誤を繰り返してきました。

その中である日、「強化とは何か?」と問われたことがありました。質問を投げかけてくださったのは、日本代表チームのハイパフォーマンスマネージャーを務めていた方です。

私は長年、現場でトレーニングメニューを作り、選手の成長を目の当たりにしてきたつもりでしたが、この問いに即答することができませんでした。「強化」について、一言で自分の考えを言語化できなかったのです。

そのとき、その方が教えてくださった「強化とは何か?」という問いの答えは、非常にシンプルで、そして深いものでした。

「強化とは、計画である」と。

その言葉を聞いた瞬間、私の中で強化の意味がガラリと変わりました。計画以上のことは、決してできない。だからこそ、最初に立てる計画こそが勝負の分かれ目であり、すべての出発点であると。その考え方に、大きな衝撃を受けたのを今でも鮮明に覚えています。

計画とは、単なるスケジュールや目標設定ではありません。それは「何を優先して準備すべきか」を明確にする指針であり、ブレない軸でもあります。

例えば──
4年後にどのようなチームでありたいのか?
世界で勝つために必要な武器は何か?
私たちは何を武器にして戦うのか?
そのために今、どんなトレーニングが必要なのか?
何を伸ばし、何を削るのか?
計画どおりに進まなかったとき、どう修正するのか?
そして、そもそも「勝つ」とはどういう状態なのか?

そういった問いに、丁寧に向き合いながら「勝つための道筋=計画」を描いていくことこそが、強化の本質なのだと感じています。計画どおり行かないことも計画しておくことが本当の計画です。それが強化です

現場で成果が出たとき、多くの人はトレーニング方法や選手の能力に目を向けます。しかし、その背景には、必ずと言っていいほど「精緻な計画」が存在しています。言い換えれば、どれだけ能力の高い選手がいても、どれだけ熱心なスタッフが揃っていても、正しい計画がなければ、ゴールにはたどり着けません。

私はこの考え方を、スポーツの枠を超えて、自分の人生や現在取り組んでいる「FEEL FREE」の運営にも活かしています。「どう在りたいか?」を明確にし、それに向かって何を、いつ、どう準備していくか。計画を立てることは、夢を現実に変えるための第一歩だと、今は確信しています。

皆さんにとっての「強化」とは何でしょうか?
私の答えは、これからも変わらず、「強化とは、計画である」です。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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