アンラーンとは?新しい学びのスタイルとは

皆さんは「アンラーン(unlearn)」という言葉を聞いたことがありますか?あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、今、教育やビジネスの現場で注目されている新しい学びのスタイルです。
私自身、これまで「学ぶこと」とは新しい知識や技術を身につけること、つまり“足していくもの”だと考えていました。しかし、コーチングの現場に長く身を置くなかで、「学ぶ」とは「手放すこと」でもあると気づかされました。それがアンラーンの本質です。
アンラーンとは、これまで自分の中で「当たり前」になっていた考え方や習慣、思い込みをいったん脇に置いて、物事を新しい視点から捉え直すことです。たとえば、「こうあるべきだ」「これが正しい」という固定観念が、実は今の自分の成長を妨げていることがあるのです。
私の大学院の先輩の話が、そのよい例です。
彼は、日本人初のNBAプロコーチになるという夢を掲げ、アメリカにコーチ留学した方です。現在はBリーグで活躍しながら、今もその夢に向かって歩み続けています。
数年前に彼と話す機会がありました。彼が帰国した際、中学校時代のバスケットボール部の恩師にあいさつに行ったという話を聞かせてくれました。久しぶりの再会で、様々なコーチング論について語り合ったそうです。
そのとき恩師が言った言葉が、とても印象に残ったそうです。
「コーチほど経験が役に立たない仕事はない。」
この言葉は、コーチングという仕事の本質を突いていると私も感じました。もちろん、経験は大切です。過去の経験があるからこそ判断できることや、導けることがあります。しかし、その経験がすべての場面に当てはまるとは限らないのです。
スポーツの現場は常に変化しています。選手一人ひとりの個性、コンディション、時代背景、価値観——どれも同じ瞬間は二度とありません。そのため、過去の成功体験に固執してしまうと、目の前の選手の可能性を見落としてしまうことがあります。
だからこそ、常に自分の思考や方法を問い直し、「このやり方は今も通用するのか?」「この考え方は目の前の選手に合っているのか?」と、柔軟に自分をアップデートしていくことが求められます。これはまさに「アンラーン」のプロセスそのものです。様々な経験を積んできたコーチが言う言葉だからこそ、説得力のある言葉だと感じました。
人はつい、新しい知識やスキルを「積み重ねていく」ことで成長できると考えがちです。でも、ときにはこれまでの考え方ややり方を見直し、いったん手放す勇気も必要です。
すでに持っているものにこだわりすぎず、一度立ち止まって視点を変えてみる。そうすることで、今まで見えなかったものが見えてきたり、新しい発想や出会いに巡り会えるのだと思います。
これからも「アンラーン」という視点を、日々の暮らしや仕事、学びの中に取り入れていきたいと思います。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸