アンラーンの重要性:過去の経験から解放される

大学院時代、私の恩師は頻繁にこんな言葉を口にしていました。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

これは英語では “Only a fool learns from his own mistakes. The wise man learns from the mistakes of others.” として知られ、一般にはドイツのオットー・フォン・ビスマルクの言葉とされています 。

もちろん、過去の経験から学ぶことは多くの価値をもたらします。失敗や成功の記憶は私たちにとって、強い影響があります。しかし、経験に固執しすぎてしまうと、その枠組みによって新たな視点や発想が制限されてしまうことがあります。結果として、同じような失敗を繰り返してしまうリスクも少なくありません。

ここで必要となるのが、「アンラーン(unlearn)」の考え方です。アンラーンとは、自分が持っている価値観や思い込み、固定概念をいったん手放し、まるで新しい視点から物事を見るようにする姿勢を指します。無意識のうちに、自分という“フィルター”を通してだけ物事を捉えてしまう。その視点をリセットすることで、思いもよらない発見や突破口が見えてくるのです。

賢者が「歴史に学ぶ」とは、つまり自らの経験にだけ頼らず、他者や過去に起きた出来事を客観視し、その教訓を自分の人生や仕事に活かしていくという姿勢です。恩師が頻繁にこの言葉を語っていたのは、「過去に縛られるのではなく、そこから学んでこそ、より広い視野と柔軟な思考が手に入るのだ」というメッセージを、私たちに常に伝えたかったからだと感じています。

アンラーンとは決して過去を否定することではありません。むしろ、土台として尊重しながらも、その上に新しい視座を築くための“脱皮”とも言えます。古い価値観や枠組みを解除し、まっさらな視点で物事を見つめ直す勇気。それが、変化の激しい現代で確かな一歩を踏み出すために、必要なスキルなのです。

恩師が繰り返し強調していたこの格言は、ただ知識として覚えるだけでは意味がありません。自らの経験と歴史の両方を学び、そして固定観念を手放していく。これこそが「アンラーン」の本質であり、真の成長につながる智慧だと、私は確信しています。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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