失敗を乗り越える:コーチと選手が共に学ぶ方法

スポーツの世界で「成功」と「失敗」を分ける最もわかりやすいものは、試合の「勝ち」と「負け」ではないでしょうか。仮に、勝ちを成功、負けを失敗と置き換えてみると、目標としていた試合や大会で負けてしまうことは当然起こり得ます。チャンピオンになれるのは1チームだけ。だからこそ、多くのチームにとって「負ける」という現実は避けて通れません。
しかし、負けた直後というのは精神的なショックが大きく、これまで積み重ねてきた努力や試合の中身を冷静に振り返るのは簡単ではありません。その時にコーチとして大切にしたいのは「勝つために立てていたターゲットをクリアできたのか?」という視点です。単に勝敗だけでなく「設定した目標を達成したか、しなかったか」という基準を持つことで、失敗に見える結果の中にも成長のヒントを見出すことができるのです。
ここで重要なのは「勝った=成功」とは限らないということです。たとえ試合に勝てたとしても、偶然や相手のミスによって勝利が転がり込んだ場合、チームが掲げたターゲットをクリアできていなければ、それは真の成功とは言えません。逆に、試合には負けたとしても、設定したターゲットをほぼ達成できていたのであれば、それは次につながる価値ある成果なのです。
例えば「3トライを奪い、相手を2トライ以内に抑えて勝利する」というターゲットを設定したとします。そのためのプランとして「攻撃権を奪ったらボールを継続し続けて必ずトライに結びつける」という明確な戦い方を描いたとします。結果的に3トライが取れなかった場合でも、「なぜ達成できなかったのか?」という分析に入ることが可能です。
ここで分析の視点が役立ちます。
- 「何が」原因だったのか?(戦術・技術・フィットネスなど)
- 「いつ」その問題が起きたのか?(前半の立ち上がり、後半の終盤など)
- 「どこ」でそれが起きたのか?(自陣深く、相手陣22mライン内など)
- そして特に大切なのが 「誰」が関わっていたのか? という視点です。
「誰かの責任を追及する」のではなく、「誰がその場面で何を選択したのか?」を振り返ることで改善策が具体的になります。例えば、キックを選んだ選手の判断がよかったのか? パスを受けた選手が準備できていたのか? サポートに入るべき選手が間に合わなかったのか? こうして「誰」という要素を加えることで、チーム全体の理解度が深まり、次の試合に向けた修正が具体的に見えてくるのです。
このように、結果を「勝ち負け」だけでなく「目標を達成したかどうか」という基準で捉え、さらに「何が」「いつ」「どこで」「誰が」という複数の視点から振り返ることで、失敗も勝利もより実りある学びへと変わっていきます。
スポーツのキャリアはもちろん、仕事や人生においても「勝ち負け」のような結果は何度も訪れます。そのたびに失敗をどう捉え、どう乗り越えていくかが、その後の成長を大きく左右します。コーチとして忘れてはいけないのは、失敗を単なる挫折として扱うのではなく「成長のための素晴らしい機会」として受け止めることです。そして同時に、勝ったとしても目標をクリアできなかった内容を「成功」と錯覚しないことです。
一時的に感じる悔しさや落胆は、選手と同じように私自身も強く感じます。しかしその感情は感情としてしっかり受け止めた上で、「では次にどうするか?」に切り替えていく。そのとき、選手と一緒に学び、共に歩む姿勢を持つことで、勝ちも負けも未来への糧に変えていくことができるのです。
――勝っても負けても、目標に向き合い、学び続ける姿勢こそが、真の成長と成功をつくり出すのです。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸