小さな成功を積み重ねる大切さ

人が自信を持つためには、「小さな成功を積み重ねる」ことが欠かせません。
大きな成功はもちろん自信につながりますが、それは一朝一夕に得られるものではありません。むしろ、その土台となるのは日々の中で繰り返される小さな成功体験の積み重ねです。
しかし、この「小さな成功」は往々にして見過ごされやすく、自分でも気づかないことが少なくありません。だからこそ、コーチの役割は、選手が気づけるタイミングで適切な課題を与え、その達成をしっかりとフィードバックしてあげることにあります。
では、小さな成功とはどのようなものなのでしょうか。
ラグビーを例にとって説明します。基本的な練習のひとつに「パス&キャッチ」があります。その中で大切なのが「アーリーキャッチ」と呼ばれる技術です。ボールが飛んでくる前に手を伸ばし、手のひらでターゲットを示しながら確実にキャッチする。文字にすれば簡単に思えますが、実際にはどんな状況でも正しく実行することは非常に難しいのです。意識を続けなければすぐに崩れてしまう技術でもあります。
だからこそ、段階的に練習を積み重ねていくことが重要です。
まずは①立ち止まった状態でアーリーキャッチを行う。
次に②走りながら、相手のプレッシャーがない状況で実践する。
さらに③走りながら相手がいる状況でキャッチを試みる。
ここから④キャッチが難しいボールを投げてもらって挑戦したり、
⑤雨で濡れたボールを扱う環境を設定するなど、条件を複雑にしていきます。
このように負荷を少しずつ高めながら「できた」という感覚を繰り返し体験していくことで、技術が確実に身につき、やがては無意識のレベルで発揮できるようになります。そしてどんな状況でも自信を持ってアーリーキャッチができる選手に成長していくのです。
ここで強調したいのは、この積み重ねは初心者だけのものではないということです。世界のトップレベルで戦う選手であっても、全く同じように基本を大切にし、小さな成功体験を繰り返して自信を積み上げています。違いがあるとすれば、その成功を実行する場が「強烈なプレッシャーのかかる試合の最前線」だということだけです。
大きな舞台で輝くために必要なのは、一夜にして生まれる才能ではなく、日々の小さな積み重ねから得た自信です。自信は「自分ならできる」という感覚からしか生まれません。そして、その感覚は段階的な練習環境で小さな成功を何度も経験することでしか育ちません。
だからこそ、コーチは「選手にいかに小さな成功を感じさせられるか」を常に考える必要があります。選手自身が成功を自覚し、それを自信へと変えていく。その循環ができたとき、選手はどんなプレッシャーの中でも堂々と自分の力を発揮できるようになるのです。
結局のところ、世界レベルの勝負においても「小さな成功の積み重ね」が勝敗を分ける決定的な要素になります。
だから私はこれからも、小さな成功を見逃さずに伝え、選手の自信の種を育てていきたいと考えています。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸