物質的な幸せと精神的な幸せの違い

「あなたにとって幸せとはなんですか?」と聞かれたら、どんな答えが思い浮かぶでしょうか。
「お金持ちになること!」
「大切な人と一緒に過ごすこと!」
「美味しいものを食べられること!」
「好きな仕事に打ち込めること!」
「健康で毎日を過ごせること!」
こうした答えはどれも立派な“幸せ”の形です。ただよく見ると、モノや環境がもたらす「物質的な幸せ」と、心の満足や人とのつながりから生まれる「精神的な幸せ」に大きく分けることができます。
では、この二つはどう違うのでしょうか。
物質的な幸せは、車や家、ブランド品、美味しい食事など、目に見えるものや手に入れられるものによって得られる満足感です。一方で精神的な幸せは、人との絆、感謝の気持ち、自分の成長や夢の実現など、心の中にある充足感によって得られるものです。
現在、武蔵野大学で「幸福学」を研究している前野隆司先生は、幸せを次の4つに分類しています。
- 「やってみよう!」因子(自己実現と成長)
- 「ありがとう!」因子(つながりと感謝)
- 「なんとかなる!」因子(前向きと楽観性)
- 「ありのままに!」因子(独立と自分らしさ)
この4つを見てもわかるように、幸せの多くは「精神的な幸せ」に深く関わっています。もちろん、物質的な幸せも大切です。生活の基盤が整わなければ安心して笑うことも難しいからです。ただし、幸福学の研究では「お金が増えるほど幸せになれるのか?」という問いに対して、興味深い結果が示されています。
経済学者のイースターリンが1970年代に示した「イースターリンのパラドックス」によると、お金が増えるとある程度までは幸福度が高まります。しかし、生活に困らない水準を超えると、それ以上は幸福度がほとんど変わらないことがわかっています。つまり、物質的な豊かさには限界があるということです。
一方で精神的な幸せはどうでしょうか。たとえば「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えると、自分も相手も気持ちが温かくなります。仲間と一緒に努力して目標を達成したときには、達成感だけでなく深いつながりも得られます。これらはお金で買うことができないものです。むしろ、年齢や経験を重ねるほどに大きく育っていく幸せとも言えるでしょう。
私自身も、ラグビーを通して物質的なものより精神的な喜びのほうが強く心に残っていると実感します。勝利の瞬間よりも、その過程で仲間と苦労を共にしたこと。大きな大会に出場したときに、応援してくれる人がいると感じられたこと。これらはどんな金額にも代えられない幸せでした。
まとめると、物質的な幸せは「あると便利」な基盤ですが、精神的な幸せは「人として生きる意味」そのものです。前野先生の4因子が示すように、自己成長、人とのつながり、前向きさ、自分らしさを大切にすることで、誰でも幸せを感じることができます。
「幸せとは何か?」――その答えは人によって違います。でも研究や経験から見えてくることは、最終的に私たちの心を満たすのは“精神的な幸せ”だということです。物質的な幸せを土台にしつつ、日々の中で感謝やつながりを意識することが、豊かな人生につながっていくのではないでしょうか。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸