子供の記憶力への感動と心を開く仕掛け

女子ラグビークラブチーム「ARUKAS KUMAGAYA」では、地域の小学生を対象にタグラグビー教室を行っています。先日、2年連続で訪問させていただいた小学校で、子供たちの「記憶力」に心から感動する出来事がありました。

私は子供たちが親しみやすいように、本名ではなく「まんじゅう」という名前でコーチをしています。初めて聞く方からは「なぜそんな名前を?」とよく聞かれますが、そこには理由があります。
子供たちは初対面の大人に対して、少なからず“心のバリア”を持っています。そのバリアを解くためには、まず「笑顔」と「安心感」が必要です。自分のことを覚えてもらうためにも、ちょっと変わった印象的な名前を名乗ることで、距離が一気に縮まるのです。子供たちは「コーチ」という肩書きよりも、「まんじゅう!」というあだ名を呼ぶことで、心の距離をぐっと近づけてくれます。

今回訪れたのは、前年に4年生だった子供たちが5年生になった学年でした。私の顔を見るなり、校庭のあちこちから「まんじゅう!!」という声が響き渡りました。
正直、子供たちの記憶に驚き感動しました。1年前の、わずか2時間の授業を子供たちはしっかり覚えていてくれたのです。その瞬間、私は改めて「子供の記憶力のすごさ」と「出会いの一瞬の重み」を実感しました。

子供たちは、感情が動いた瞬間の出来事を強く記憶します。
だからこそ、教育や指導の現場で「どんな体験を経験してもらうか」「どんな感情を残すか」は非常に重要です。タグラグビー教室のようなイベント的な活動は、単なるスポーツ体験ではなく、子供たちの心に残る“人生の一コマ”になるのだと感じました。

同時に、イベントを実施する側にも多くの工夫が求められます。たとえば、教える内容だけでなく、声のトーン、笑顔、リアクション、そして「楽しさ」を引き出す仕掛け。私はあえて「まんじゅう」と名乗ることで、子供たちが“構えずに自分らしく”関われる環境をつくりたいと思っています。それが結果的に、スポーツへの興味や挑戦する意欲を育てることにつながるのです。

「まんじゅう」という名前の裏には、“子供たちの可能性を引き出すための仕掛け”という意味があります。どんなに素晴らしい指導法や練習メニューを用意しても、子供の心が開かれていなければ、成長は起こりません。まずは「楽しい」「安心できる」「もっとやりたい」と思ってもらうことが大切です。

今回の経験を通して、私は改めて「子供たちは教えたことよりも、感じたことを覚えている」ということを学びました。
どんな言葉をかけたかよりも、どんな気持ちにさせたか。
どんな技術を教えたかよりも、どれだけ笑顔で関われたか。

教育もスポーツも、最初の一歩は“心の扉を開くこと”から始まります。
そしてその鍵を握っているのは、意外にも「まんじゅう」という一言のような、ちょっとした工夫とユーモアなのかもしれません。

――子供たちの「覚えていてくれた笑顔」が、私にとって最高のご褒美でした。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

目次