1-0-2 正解を与える教育が抱える課題


日本の義務教育では、国語・算数・理科・社会・英語といった教科を通じて、知識を正確に理解し、正しい答えを導き出す力を育ててきました。
いわゆる「正解」を理解し、再現する教育です。これは社会で判断し、行動していくうえで欠かせない、大切な基礎教育であることは間違いありません。

教育実践家の 藤原和博 氏は、この「正解を正しく導き出す力」を情報処理力と呼んでいます。
情報処理力とは、与えられた情報を正確に読み取り、整理し、決められた枠組みの中で最適解を導く力です。
試験、資格、マニュアル化された業務など、正解が明確な場面では、今もなお必要不可欠な能力です。

一方で藤原氏は、もう一つ重要な力として情報編集力を提唱しています。
情報編集力とは、人の考えや経験、価値観、知識といった点と点をつなぎ、新しい意味や発想を生み出していく力です。
正解を出すことではなく、「納得解」を導き出す力とも言えます。

現代は「正解のない時代」と言われています。
社会の変化は激しく、過去の成功体験や前例がそのまま通用しない場面が増えています。
こうした時代において求められるのは、単独で答えを出す力ではなく、対話や議論を通じて、複数の視点をつなぎ合わせる力です。

情報編集力の本質は、「一人で考える力」ではありません。
人と人との関係性の中で、意味を再構築していく力です。

創造性とは、まったく新しいものをゼロから生み出すことではありません。
既に存在する知識や経験を、新しい文脈で組み替えること。
つまり、創造性の正体は「情報編集力」なのです。

ここで重要になるのが、次の三つの視点です。

  • アンラーン=固定観念を手放す勇気
  • アナロジー思考(類推思考)=他分野の知識や経験を“借りてきて”、新たな発想を生み出す力
  • 情報編集力=多様な情報を意味ある形に再構築する力

アナロジー思考とは、まったく新しい答えをひねり出すことではありません。
すでに存在する別の事例・分野・経験を借りてきて、自分の課題に当てはめ直す思考です。

たとえば、
ビジネスの課題をスポーツに例えて考える。
組織づくりを家庭や地域の関係性になぞらえて考える。
過去の失敗を、別の文脈で起きた成功事例と重ね合わせて捉え直す。

このように、異なる世界から「ヒントを借りる」ことで、思考は一気に広がります。
アナロジー思考は、正解を探す思考ではなく、発想をずらし、問いを深めるための思考なのです。

重要なのは、頭の正確さよりも柔軟さです。
正解を求め続ける思考だけでは、想像を超えるアイデアは生まれません。
少しの遊び心や視点の転換、そして「他の世界から借りてくる勇気」が、新しい価値を生み出す出発点になります。

この三つの力は、教育、ビジネス、地域づくり、組織運営など、あらゆる分野で求められています。
分野や立場の垣根を越えた発想の掛け合わせが、これまでにない解決策や文化を生み出していきます。

創造性とは、「考えること」ではなく、「考え方を変えること」
そこから、未来を切り拓く力が育っていきます。

もちろん、正解を与える教育や情報処理力は、情報編集力の土台として不可欠です。
しかし、それだけで今の社会を生き抜けるわけではありません。

AIが情報処理力を担う時代へと進化していく中で、人間に求められるのは、人と向き合い、対話を重ね、価値を共に生み出していく力です。

ここで重要になるのが、メンタリングです。

メンタリングとは、正解を教えることではありません。相手の経験や言葉に耳を傾け、問いを投げかけ、
その人自身が類推し、借りてきて、意味づけし直すプロセスを支える関わりです。

人の話を聴く力。違いを受け入れる力。関係性の中から意味を紡ぎ出す力。

こうした力は、メンタリングという人と人の関係性の中でこそ育まれていきます。

だからこそ今、
人と人をつなぎ、思考をひらき、新しい発想を生み出す関わりが、
これまで以上に重要になっているのです。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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