2-3-3 成長より効率が優先される社会

成長には時間がかかります。教育や指導の成果は、すぐに目に見える形で現れるとは限りません。むしろ、多くの場合は長い時間を経て、ある瞬間にふと表れるものです。さらに、人によって成長のスピードやタイミングは大きく異なります。今日変わる人もいれば、数年後に変わる人もいます。指導する側にとって、その変化がいつ訪れるかは決してコントロールできるものではありません。

しかし現代社会は、急速に「効率」を重視する方向へと進んでいます。インターネットの発達やAIの進化によって、私たちはあらゆる場面でスピードと成果を求められるようになりました。短時間で結果を出すこと、無駄を省くこと、合理的に物事を進めることが社会の標準になりつつあります。

もちろん、方法論として効率を追求すること自体は間違いではありません。効率化によって生まれる時間や余裕は、新たな挑戦や学びにつながる可能性もあります。しかし、人の成長という視点で考えると、すべてを効率で測ることには限界があります。なぜなら、人の成長は決して直線的なものではなく、時には遠回りや失敗を通して深まっていくものだからです。

私は長くスポーツの指導に関わる中で、選手たちのさまざまな人生に触れてきました。その中で強く感じるのは、人はある瞬間をきっかけに大きく変わるということです。しかし、その「変わる瞬間」は決して計画通りには訪れません。

ある選手の話があります。学生時代、彼は強いプライドを持ち、自分の弱さを人に見せることが苦手なタイプでした。社会に出てからは仕事で思うような結果が出ず、大きなプレッシャーの中で苦しむ日々を過ごしていたそうです。周囲の人たちも心身の不調に悩むような厳しい環境の中で、彼自身も限界に近い状態だったと振り返っていました。

そんなある日、彼は思い切って周囲の人に助言を求めました。それまでの彼にとっては大きな一歩でした。プライドが邪魔をして、人に頼ることができなかったからです。しかし、その小さな行動をきっかけに、彼は少しずつ周囲の意見を受け入れられるようになりました。そして次第に成果も出るようになり、やがて自分の道を切り開くまでに成長していきました。

この話から私が感じたのは、人の成長は「時間差」で訪れるということです。学生時代に経験したこと、指導者からかけられた言葉、仲間との関係、困難を乗り越えた経験。それらがすぐに形になるとは限りません。しかし人生のどこかのタイミングで、その経験が力として現れることがあります。

また、この話は「プライド」についても考えさせてくれます。ポリシーや信念、筋を通すことは人生において大切な価値です。しかし、必要以上のプライドや意地は、時として自分の成長を妨げる壁になります。人は、誰かの助けを受け入れたときに新しい視点を得て、次のステージへ進むことができるのかもしれません。

効率を重視する社会の中では、すぐに成果が出ない経験は無駄に見えることがあります。しかし、人の成長という視点で見れば、無駄な経験などほとんど存在しません。遠回りに見える時間も、後になって振り返れば大切な学びだったと気づくことが多いのです。

だからこそ、教育や指導に関わる者として大切にしたいのは、「すぐに結果を求めすぎない姿勢」です。人の可能性を信じ、その人の成長のタイミングを待つこと。その積み重ねが、いつか思いもよらない形で花開く瞬間につながるのだと思います。

人の成長は効率だけでは測れません。時間がかかるからこそ、そこには深い意味と価値があります。私たちは効率を追い求める社会の中にいながらも、人の成長という長い物語を信じ続けていく必要があるのではないでしょうか。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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