2-3-7 権力者から支援者へと変化していく指導者像

日本のスポーツ界においても、社会においても、これまで長く「ヒエラルキー(階層構造)」が前提とされた組織運営が一般的でした。ヒエラルキーとは、上下関係が明確に存在し、上位にいる者が意思決定権を持ち、下位の者はそれに従うという構造を指します。この仕組みは、効率的に物事を進めるうえで一定の機能を果たしてきました。
スポーツの現場でも同様に、指導者がレギュラーと非レギュラーを決め、戦術や強化方針を一方的に示し、選手はそれに従うという関係性が当たり前でした。そこでは、指導者は「権力者」としてチームを統率し、結果を求める存在であったと言えるでしょう。
しかし、時代は大きく変化しています。価値観が多様化し、個人の主体性や内発的動機づけが重視される現代において、「権力で人を動かす」マネジメントは限界を迎えています。特にスポーツの現場では、選手一人ひとりが自ら考え、判断し、行動する力が求められるようになっています。
改めて考えると、スポーツの主役は誰なのか――それは紛れもなく選手です。選手自身の「やりたい」という気持ちや、「どう成長したいか」という意思こそが、競技力向上の根幹にあります。その内側から湧き出るエネルギーを引き出すことこそ、現代の指導者に求められる役割です。
そのために重要なのが、「質問」「傾聴」「承認」という関わり方です。まず、指導者は答えを与えるのではなく、選手の内側にある考えや感情を引き出すための問いを投げかけます。「なぜそう考えたのか」「次にどうしたいのか」といった問いが、選手自身の思考を深めていきます。
次に、その言葉を真剣に受け止める「傾聴」が必要です。ただ聞くだけではなく、相手の背景や感情に寄り添いながら理解しようとする姿勢が、信頼関係を築きます。そして最後に「承認」です。結果だけではなく、過程や挑戦そのものを認めることで、選手は安心して挑戦し続けることができます。
このような関わり方は、単に優しい指導を意味するものではありません。むしろ、選手の可能性を信じ、長期的な成長を支えるための「本質的な厳しさ」を内包しています。指導者がすべてを決めるのではなく、選手が自らの意思で選び、責任を持つ環境を整えることが重要なのです。
これからの指導者に求められるのは、「権力者」ではなく「支援者」としての在り方です。自身が率先して行動し、選手を信頼し、その成長のためにあらゆる支援を惜しまない存在です。指導者が変われば、組織は変わり、選手の姿勢も変わります。
人はコントロールされることで動くのではなく、理解され、信頼されることで主体的に動き出します。だからこそ今、私たちは問い直す必要があります。「自分は権力で動かしていないか」「支援する存在になれているか」と。
権力から支援へ――。この変化こそが、これからのスポーツ、そして社会における新たなリーダーシップの本質なのです。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸
