3-4-2 主体性が育ちにくい環境

「もっと自分で考えて行動してほしい。」
教育や職場、家庭など、さまざまな場面でこのように感じた経験がある人は少なくないでしょう。しかし、主体性が育たない原因を本人の意欲や能力だけに求めてしまうと、本質を見失ってしまいます。

主体性とは、「自分で考え、自分で選び、自分で行動する力」です。そして、この力は本人だけの問題ではなく、その人を取り巻く環境によって大きく左右されます。

幼い子どもは、自分の気持ちを驚くほど素直に表現します。「これがやりたい」「それはやりたくない」「こうしてみたい」。周囲から見るとわがままに映ることもありますが、それは自分の感情や意思を率直に表現している姿でもあります。

しかし、人は成長するにつれて、「迷惑をかけてはいけない」「空気を読まなければならない」「言われたことを正しくやるべきだ」という価値観を学びます。それ自体は社会生活を送るうえで欠かせないことです。時間や場所、状況に応じて適切に振る舞う力は、人間関係を築くための重要な能力でもあります。

一方で、その過程で「本当はどうしたいのか」を表現する機会を失ってしまう人も少なくありません。いつしか、自分の意思よりも周囲の期待を優先し、「何をしたいか」ではなく、「何をすべきか」だけを考えるようになります。

そのような環境では、主体性は育ちにくくなります。

メンタリングの役割は、答えを与えることではありません。本人の中にある思いや可能性を引き出し、自ら考え、選択し、行動することを支援することです。

そのためには、まず安心して自分の気持ちを話せる環境が必要です。「こんなことを言ったら否定されるかもしれない」「失敗したら評価が下がるかもしれない」という不安がある環境では、人は本音を語ることができません。反対に、自分の考えや感情を受け止めてもらえる安心感があると、人は少しずつ自分の意思を言葉にできるようになります。

ここで大切なのは、「やりたいこと」と「やるべきこと」は対立するものではないということです。

主体性とは、自分の好きなことだけをすることではありません。社会には果たすべき責任や役割があります。それらを理解したうえで、自分は何を目指し、どのように貢献したいのかを自ら考えられることが、本当の主体性です。

そのためには、自分をコントロールする力も必要になります。感情に任せて行動するのではなく、状況を冷静に判断し、必要なときには我慢し、挑戦すべき場面では勇気を持って一歩を踏み出す。この「抑える力」と「表現する力」の両方を身につけることで、人は主体的に行動できるようになります。

メンターは、この二つの力が育つ環境をつくる存在です。指示や命令によって人を動かすのではなく、問いかけを通して考える機会を与え、小さな挑戦を見守り、失敗しても再び挑戦できる安心感を提供する。その積み重ねが、自ら動こうとする意欲を育てていきます。

「どうしたいと思う?」「あなたは何を大切にしたい?」「次にできる一歩は何だろう?」

こうした問いは、相手の中に眠っている意思を呼び覚ますきっかけになります。人は、自分で決めたことに対して最も強い責任感と行動力を発揮するからです。

主体性は、教え込むものではありません。引き出すものです。そして、それを引き出すためには、安心して考え、安心して失敗し、安心して挑戦できる環境が欠かせません。

メンタリングとは、人を変える技術ではなく、人が自ら変わろうとする力を信じ、その成長を支える関わり方です。

「何をやるべきか」を教えるだけではなく、「何をやりたいのか」を一緒に見つけること。そして、「やりたい」と思えたことに挑戦できる環境を整えること。

そのような環境があって初めて、人は自ら考え、自ら選び、自ら行動する主体性を育み、自分らしい人生を歩んでいくことができるのです。

SPORTS BAR FEELFREEオーナー

宮﨑善幸

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