3-5-3 「できない自分」を受け入れられない

皆さんは、自分自身をどれくらい大切にできているでしょうか。

私たちは日々、無意識のうちに他人と自分を比較しています。「あの人は仕事ができる」「自分より努力している」「自分にはあの人のような能力がない」。他人の優れている部分が目に入るほど、自分に「無いもの」や「できないこと」ばかりが気になってしまうことがあります。

しかし、人は誰しも、できないことや苦手なこと、好きになれない自分の一面を持っています。それらをすべて克服しなければ、自分には価値がないのでしょうか。

決して、そんなことはありません。

ここで大切になるのが「自尊感情」です。自尊感情とは、自分には価値があると感じ、ありのままの自分を認める感覚です。それは「自分は何でもできる」と思い込むことではありません。「できる自分」だけでなく、「できない自分」も含めて、自分自身を受け入れることです。

「無いもの」を欠点と捉えるのではなく、その人の「特徴」と考えてみる。苦手なことがあるから、人に助けを求めることができる。弱さを経験したからこそ、誰かの弱さを理解できる。失敗したことがあるからこそ、挑戦する人に優しくなれる。そう考えると、自分の弱さも、その人らしさをつくる大切な一部なのかもしれません。

これはメンタリングにおいても、とても大切な視点です。

メンターの役割は、相手の「できないこと」を見つけて正解を教えることではありません。対話を通じて、メンティーが自分自身を理解し、自分の強みや弱さを認めながら、自分なりの答えを見つけていくことを支援することです。

人は安心して話せる相手がいることで、自分の内側にある気持ちを言葉にできるようになります。「本当は苦しい」「自信がない」「できない自分が嫌いだ」。そうした感情も、誰かに評価や否定をされることなく受け止めてもらうことで、少しずつ整理されていきます。

そして、もう一つ大切なのが「責任」と「自責」を分けることです。

人生における選択を自分で決め、その結果に責任を持つことは、主体的に生きるために重要です。しかし、それは「起きたことのすべてを自分のせいにする」という意味ではありません。

物事には、自分の責任だけでなく、相手の責任、組織や環境の問題、そのときの状況など、さまざまな要因があります。何でも他人のせいにすることが健全ではないのと同じように、何でも自分のせいにして背負い込むことも健全ではありません。

特に責任感の強い人ほど、「自分がもっと頑張ればよかった」「自分が我慢すればいい」と考えてしまいます。しかし、頑張り続けることだけが正しい選択ではありません。

ときには、その場所から離れることも必要です。

「逃げる」という言葉には、どこか否定的な印象があります。しかし、自分を守るために距離を取ることは、負けではありません。自分の人生を守り、もう一度前に進むための選択でもあります。壊れるまで耐えるのではなく、壊れる前に休む。誰かに助けを求める。環境を変える。それもまた、自分の人生に責任を持つということではないでしょうか。

メンタリングでは、メンターが答えを決めるのではなく、メンティー自身が「自分は本当はどうしたいのか」を考えられるように支援します。ときには頑張ることを選ぶかもしれません。ときには立ち止まることを選ぶかもしれません。そして、ときにはその場から離れることを選ぶかもしれません。大切なのは、その人自身が自分を大切にしながら、自分の意思で選択できることです。

「できない自分」を責めるのではなく、「これも自分の一部なんだ」と受け入れてみる。

自分の責任は引き受ける。でも、すべてを背負い込まない。

苦しいときには、人に頼ってもいい。立ち止まってもいい。逃げてもいい。

そして、自分一人では答えが見つからないときには、誰かとの対話を通じて、自分自身の声に耳を傾けてみる。

自分を大切にできる人は、他人の弱さにも優しくなれます。自分の「できなさ」を認められる人は、誰かの「できなさ」も受け入れられるようになります。

メンタリングとは、誰かを正しい場所へ導くことではなく、その人が「自分は自分のままでいい」と感じながら、自分自身の力で次の一歩を選べるように寄り添うことなのかもしれません。

できる自分も、できない自分も、どちらも自分です。

そのすべてを受け入れながら、自分らしく人生を選択していく。そのために必要なのは、自分を責め続ける強さではなく、自分を認め、自分を守り、そして必要なときには誰かを頼ることのできる強さなのです。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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