6-14-3 相手を変えようとしない

コーチや教員、メンターとして人に関わっていると、「もっと積極的になってほしい」「早く自立してほしい」「考え方を変えてほしい」と感じることがあります。相手の成長を願うからこそ、つい助言を重ね、自分が望む方向へ導こうとしてしまうのです。

しかし、人は他者から「変えられよう」とすると、無意識のうちに抵抗します。どれほど正しい助言であっても、本人が納得し、自分で選択しなければ、本当の変化にはつながりません。

メンタリングで大切なのは、相手を変えることではなく、相手が自ら変わっていく力を信じることです。

誰でも、物事が順調に進んでいるときには、相手を信じることができます。結果が出ているとき、自分が願うように行動しているとき、その人の良い面が見えているときには、信頼することはそれほど難しくありません。

本当に難しいのは、思うような結果が出ないときや、自分が思い描いていた姿と現実との間に差があるときにも、信じ続けることです。

相手の変化が見えないと、「自分の関わり方が間違っているのではないか」「もっと強く言わなければならないのではないか」と焦りが生まれます。しかし、成長には一人ひとり異なる時間があります。すぐに変化が表れる人もいれば、長い時間をかけて、ある瞬間に大きく前進する人もいます。

だからこそ、自分の考えを押しつけるのではなく、その人の可能性を信じて見守る姿勢が必要です。

相手に「こうなってほしい」「これくらいはできるはずだ」という思いを強く持ちすぎると、知らないうちに自分の基準を押しつけてしまいます。それは相手にとってプレッシャーとなり、自分らしい判断や挑戦を妨げることがあります。

信頼するとは、自分の思いどおりに進まなくても、「この人には自分で考え、前に進む力がある」と信じることです。失敗や遠回りも、その人にとって必要な経験かもしれません。答えを先に与えず、すぐに手を差し伸べず、本人が自分の力で立ち上がるのを待つことも、大切な支援の一つです。

「コーチが言っていることはやらないが、コーチがやっていることをやる」という言葉があります。

人は、誰かの言葉以上に、その人の姿勢や行動から影響を受けます。挑戦することの大切さを伝えるのであれば、まず指導する側が挑戦する。失敗を恐れないように伝えるのであれば、自分自身が失敗を受け入れる。相手を信じることの大切さを伝えるのであれば、まず自分が相手を信じる。

相手を変えようとする前に、自分のあり方を見直すことが大切です。

コーチや教員、メンターの役割は、相手を自分の理想の姿に変えることではありません。相手の中にすでに存在している可能性を信じ、その力が発揮されるまで寄り添うことです。

もちろん、信じ続けることは簡単ではありません。何度も迷い、疑い、あきらめそうになることもあります。それでも、そのたびに「もう一度信じよう」と選び直す。その積み重ねが、少しずつ信頼関係を育てていきます。

相手の未来を勝手に決めるのではなく、その人がどのような未来を選ぶのかを楽しみに待つ。目に見える成果だけでなく、小さな挑戦や試行錯誤、失敗から学ぼうとする姿にも目を向ける。そのような見守りの中で、人は安心して自分と向き合い、自ら変わるための一歩を踏み出せるのだと思います。

相手を変えようとしないことは、無関心になることでも、何もしないことでもありません。

信じること。見守ること。必要なときに支えること。そして、自分自身も挑戦し続けること。

相手を動かそうとするのではなく、相手が自ら動き出す力を信じて待つ。それこそが、コーチや教員、メンターに求められる大切な姿勢ではないでしょうか。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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