6-15-3 挑戦する姿が、次の挑戦者を育てる

人生100年時代といわれる今、50歳は人生の折り返し地点にすぎません。70歳を超えた人が50代の人に「まだ若い。今から何でもできる」と語る姿は、大学生に「若いのだから何でもできる」と伝える大人の姿と重なります。年齢は、見る位置によって大きくも小さくも感じられるものです。大切なのは何歳であるかではなく、これから何を始めたいかではないでしょうか。
挑戦は、若い人だけに与えられた特権ではありません。若い時期には、失敗を恐れず、数多くの経験に飛び込むことが大切です。一方、年齢を重ねると、家族や仕事、組織に対する責任が増え、勢いだけで動くことは難しくなります。しかし、それは挑戦できなくなるという意味ではありません。経験を生かし、守るものを大切にしながら一歩を踏み出す。そこには、若い頃とは異なる挑戦の価値があります。
新しいことを始めるだけが挑戦ではありません。任された仕事に誠実に向き合うこと、学び直すこと、これまで身につけた専門性を社会に還元すること、誰かが成長できる仕組みや場所をつくることも、立派な挑戦です。責任を果たしながら前に進む姿は、周囲の人に安心と勇気を届けます。
年齢を重ねてからの挑戦には、計画性も必要です。目指す未来を描き、必要な準備を行い、抱えられるリスクを見極める。そして、家族や仲間と話し合い、支えてくれる人への感謝を忘れない。無謀に飛び出すのではなく、守りながら攻めることが、大人の挑戦のあり方です。
人生の後半に過去を振り返った人の言葉には、「もっと自分のやりたいことをやればよかった」「家族や仲間との時間を大切にすればよかった」「もっと挑戦すればよかった」という思いが少なくありません。だからこそ、将来の後悔を減らすためには、目の前の責任と自分の願いのどちらも諦めず、両立する方法を考えることが必要です。
スポーツの世界にも、挑戦する姿の力が表れます。世界大会での勝利やメダル獲得は大切な目標です。勝負の世界では結果が求められます。しかし、スポーツが人々に届けるものは、勝敗だけではありません。
格上の相手にもひるまず向かっていく姿。点差が開いても最後まで諦めない姿。自分の強さと弱さに向き合い、仲間とともに立ち上がる姿。そこには、観ている人の心を動かす力があります。その姿を見た子どもが、「いつか自分もあの舞台に立ちたい」と夢を持つかもしれません。困難の中にいる人が、「もう一度頑張ってみよう」と立ち上がるかもしれません。
人は、誰かに「挑戦しなさい」と言われただけでは、なかなか動けません。しかし、身近な人が失敗を恐れながらも一歩を踏み出す姿を見ると、「自分にもできるかもしれない」と感じます。挑戦する姿そのものが、言葉を超えたメッセージになるのです。
次世代を育てるとは、知識や経験を一方的に教えることだけではありません。自分自身が学び、迷い、挑み続ける姿を見せることも、次の世代への大切な教育です。大人が年齢を理由に可能性を閉ざさなければ、若者もまた、自分の未来を信じることができます。
一つの挑戦が、誰かの勇気になる。その勇気が、次の挑戦を生み出していく。挑戦は一人の中で終わるものではなく、人から人へと受け継がれていくものです。
人生を振り返ったとき、「もっと挑戦すればよかった」と後悔するのではなく、「やりたいことに向き合ってきた」と胸を張れる自分でありたい。そのために、今日できる小さな一歩を踏み出す。挑戦する姿が、まだ見ぬ次の挑戦者を育て、未来を少しずつ明るくしていくのだと思います。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸
