弱さを見せられないリーダー

リーダーには「強くなければならない」という思い込みがあります。
特にスポーツの世界では、試合前に不安や恐怖を見せることは良くないことだと考えられがちです。強気な言葉を口にし、自信があるように振る舞い、弱さを隠すことが求められる場面も少なくありません。
しかし、本当の強さとは何でしょうか。
ある高校生女子ラグビーチームが、全国トップレベルの強豪チームと対戦する試合前の出来事です。ウォーミングアップ前の個人アップの時間、選手たちの様子を見ていると、それぞれが異なる感情を抱えていることが伝わってきました。
不安そうな表情の選手。緊張で身体が硬くなっている選手。無理に気持ちを高めようとしている選手。
試合前だからこそ、誰もが「強い自分」を演じようとしていました。しかし、その姿の奥には、言葉にならない本音が隠れているように見えました。
そこで、急遽ショートミーティングを行い、「今の本音を正直に話そう」という時間を設けました。
最初は戸惑いながらも、選手たちは少しずつ自分の気持ちを言葉にし始めました。
「正直、怖いです。」
そう話した一年生の選手は涙を流していました。
多くの人は、その姿を弱さだと捉えるかもしれません。しかし、本当はその逆です。自分の感情から逃げず、ありのままの自分を認め、仲間に共有することには大きな勇気が必要です。
本当の弱さとは、不安を感じることではありません。不安を感じている自分を認められないことです。
リーダーも同じです。
多くのリーダーは、「弱みを見せてはいけない」と考えています。しかし実際には、自分の弱さや課題を理解している人ほど、周囲から信頼されます。
なぜなら、人は完璧な人についていくのではなく、誠実な人についていくからです。
大切なのは、自分の感情を正しく認識することです。
不安を感じる。
緊張する。
怖いと思う。
それ自体は悪いことではありません。
問題なのは、それらを無理に押し殺そうとすることです。
感情は消そうとするほど大きくなります。しかし、一度認めてしまうと、不思議なほど整理されていきます。
試合前のミーティングを終えた選手たちは、どこか表情が柔らかくなっていました。気持ちを共有したことで、自分たちが今やるべきことに意識を向けられるようになったのです。
結果として試合には敗れました。しかし、チームは試合前に設定した「ワントライを取る」という目標を達成しました。
勝敗だけで見れば負けかもしれません。しかし、自分たちの力を出し切り、目標を達成できた経験は、大きな成功体験として選手たちの中に残りました。
この経験は、スポーツだけではなく人生にも通じます。
私たちは誰しも、「理想の自分」と「等身大の自分」の間で生きています。
理想を持つことは素晴らしいことです。しかし、理想ばかりを見ていると、現実とのギャップに苦しむことがあります。
だからこそ必要なのが、自分自身を正しく理解することです。
まずは、理想の自分を言葉にすること。
どんな人になりたいのか。
どんなリーダーになりたいのか。
どんな価値を周囲に届けたいのか。
理想を言語化することで、自分が進みたい方向が見えてきます。
次に、今の自分を言葉にすること。
自分の強みは何か。
自分の弱みは何か。
何が得意で、何が苦手なのか。
等身大の自分を正しく理解することで、理想との距離が見えてきます。
そして最後に、自分を成長させてくれる「愛のある批判者」の存在を持つことです。
本当に成長を願ってくれる人は、ときに耳の痛いことを伝えてくれます。しかし、その言葉には愛情と期待があります。
そうしたフィードバックを受けながら、自分を見つめ続けることで、人は少しずつ理想に近づいていくのです。
弱みを見せることは恥ずかしいことではありません。
弱みを認めること。
今の自分を受け入れること。
そして、そのうえで前に進もうとすること。
それこそが本当の強さです。
理想と等身大の自分を行き来しながら、自分自身と向き合い続ける。その積み重ねが、競技者としても、リーダーとしても、人としても成長するための土台になるのではないでしょうか。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸
