5-11-4 行動につながる問いの条件

メンタリングにおいて重要な役割の一つは、相手が自ら考え、自ら行動できるよう支援することです。そのために欠かせないのが「問い」です。
スポーツの現場では、「頑張ります」「うまくなりたいです」「成長したいです」といった言葉をよく耳にします。もちろん、その言葉の中には前向きな意欲が含まれています。しかし、そのままでは行動に結びつかないことも少なくありません。なぜなら、人は曖昧な目標では動きにくいからです。
例えば、「うまくなりたい」という目標があったとします。この言葉だけでは、何をどう改善すればよいのかが分かりません。そこでメンターやコーチは問いを活用します。「何がうまくなりたいのですか?」「どんな場面で課題を感じていますか?」「できるようになると何が変わりますか?」「そのために今日できることは何ですか?」。こうした問いを重ねていくことで、漠然としていた目標が少しずつ具体的になっていきます。
例えば、「コンタクトの場面で足が止まってしまう」「タックル後の立ち上がりを速くしたい」「もっと周囲を見ながらプレーしたい」というように、自分自身の課題を言語化できるようになります。私はメンタリングの本質は「答えを与えること」ではなく、「答えを引き出すこと」だと考えています。人は自分で見つけた答えだからこそ行動できます。他者から与えられた答えは理解したつもりになっても、実際の行動に結びつかないことがあります。だからこそ、問いには大きな価値があります。
良い問いは思考を促します。良い問いは気づきを生みます。そして良い問いは行動を生み出します。その際、目標をさらに具体化する方法として活用されるのがSMARTゴールです。SMARTとは、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(目的との関連性)、Time-bound(期限がある)という5つの要素から構成されています。
例えば、「コンタクトを強くしたい」という目標を、「接触後も足を止めずに3歩前進する」という形に変えることで、選手自身が達成できたかどうかを判断できるようになります。目標が具体的になればなるほど、行動は明確になります。
しかし、目標を設定するだけでは十分ではありません。多くの人が目標を立てても行動に移せないのは、「やりたいこと」が「やること」に変換されていないからです。そこで私が活用しているのが「5W2Hプランニング」です。
5W2Hとは、What(何をするのか)、Why(なぜするのか)、Who(誰が行うのか)、When(いつ行うのか)、Where(どこで行うのか)、How(どのように行うのか)、How much(どれくらいの資源やコストを使うのか)という7つの視点で計画を整理する方法です。
例えば、「タックル後の立ち上がりを速くする」という目標であれば、Whyは「次のプレーに早く参加するため」、Whenは「毎回の練習で」、Whereは「コンタクトドリルの中で」、Howは「倒れてから3秒以内に立ち上がる」と整理することができます。このように目標を分解していくことで、行動はより具体的になり、実践しやすくなります。
メンタリングにおいて大切なのは、相手の未来を決めることではありません。相手が自ら未来を描き、その未来に向かって一歩を踏み出せるよう支援することです。そのためには、「どうしたらいいですか?」という問いに答えるだけでは不十分です。むしろ、「あなたはどうなりたいですか?」「そのために何ができますか?」「まず最初の一歩は何ですか?」という問いを投げかけることが重要になります。
行動につながる問いには共通点があります。それは、「考えさせるだけで終わらない」ということです。良い問いは具体的な行動を生み出します。良い問いは自分自身で決める力を育てます。良い問いは主体性を育てます。そして主体性こそが、スポーツだけでなく人生においても成長を支える大切な土台になるのです。
メンタリングとは、相手の可能性を信じることです。問いを通して相手の中にある答えを引き出し、その答えを行動へと変えていく。その積み重ねが成長を生み、未来を切り拓く力になっていくのだと思います。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸
